第3話 ごめんね
「桐谷、お前の弟さん元気か?」
「え? ああ、元気だよ。毎日アイドル活動やってる」
「この前テレビで見たぜ。爽やかイケメンって感じだよな」
「家じゃ甘えん坊だよアイツ」
「へぇ、意外だな。桐谷にも甘えてんのか?」
「どうだろ。俺視点ではなんとも言えん」
「その口ぶりじゃかなりだな」
にやにやと笑う板垣。
「なーんの話してんの?」
「よう雨宮。桐谷の弟さんの話だよ」
「隆くんねー。元気してる?」
「超元気。いつも猫に突進してる」
「可愛い」
「そういや、この前女子が桐谷が男性アイドルを追っかけしてる変人って噂してたから訂正しといたぜ」
「えっマジ?」
「あれは桐谷の弟なんだって」
「なんで同性のアイドル追っかけしてたら変人なんだよな。おかしな話だよ」
雨宮がため息をついた。同感である。
「女子って容赦ないよな」
「まぁ……どうなんだろうな」
「変な噂流されてるのに悪しざまに言わないなんて、研二いい人すぎだよ」
「だって俺が変人なのは事実だろ」
「そんなことないよ」
「研二は寡黙なだけだって」
「寡黙な割に下ネタを愛しているだけだぜ」
「それってかなり変では?」
「まぁ……」
結論が出て黙り込む俺たち。今日も平和だ。
そこに、同じクラスの宮本が何かを決心したような顔をして歩いてきた。
「ねぇ、桐谷くん」
ほとんどファーストインプレッションである。
「な……何か」
「桐谷くんが応援してるアイドルが桐谷くんの弟ってほんと?」
「え? ああ、そうだけど」
「ごめん!」
宮本ががばっと頭を下げた。
「私桐谷くんのこと誤解してた。男性のアイドルが好きってだけで変人認定しちゃって……ほんとにごめん」
「いや、いいけど」
「しかも、純粋に弟さんを応援してただけなんだよね……ほんとごめんね」
「いやいいよ、別に」
それだけ言うと、宮本はもう一度頭を下げて、スタスタと自分の席に戻っていった。
「うちのクラスのマジメちゃんじゃん」
「かなり真面目だったな」
「桐谷、宮本と喋ったことあるの?」
「いやない。初めて話した」
「生真面目だな〜」
「そういや宮本って、小柴さんと同じグループじゃん?」
「おっそうだな」
「こんな言い方したらアレだけど、パイプができたね」
「できたか? あの一瞬で??」
「こういうチャンスはどんどん拾ってくんだよ」
ウインクする雨宮。抜かりない奴である。
「なるほどなぁ」
美術の時間で席替えがあってから、小柴と話す機会はなくなってしまった。だからこそ、グループごと仲良くなることでまた関わりが持てるかもしれない。
「ナイス、雨宮」
雨宮はサムズアップした。
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