第25話
4月〜。さよなら、ノート、読んでくれるかな。
4月30日交換 〜小児科〜
「あのう……。」
「は、はい。」
「あなたですか?4月30日に来る、ノート持ってて、ボサボサ頭で、精神病んでそうな、ちょっとだけイケメン、って。」
「はあ。あっ、このノート!どうしてあなたが⁉︎破れてるところ、テープで丁寧に……。」
「あたしはその子の友達。小児科に長く入院してて。」
「その子は?どこにいるか知ってる?」
「……お空だよ。」 「死んじゃったの?」
「あなたは自分のことで気づいてなかったかもしれないけど、着々とあの子は死に近づいてい
た。それでも、あの子もあなたのことが好きだったから、大好きなあなたを元気にさせるため
に笑ってたんだよ。」
「そんな。嘘だ!僕のことをそんな風に思ってくれてたのも、僕が変化に気づかなかったこと
も、しっ、死んじゃったことも!」
「あなたの前では元気な姿を見せてたけど、毎日抗がん剤を点滴して、嘔吐して、体力はなく
なっていってた。元気も1ミリもなかった。でもあなたと会う日は、そのためにあなたと会う
時間をずらして抗がん剤治療をして、あなたに元気だよ、って会いに行ってた。」
「点滴が増えてたときは?」
「あれは生理食塩水と、ビタミン剤。抗がん剤じゃないのが増えた。もうほとんど前みたいに
食べられなくなっていたから。鼻から栄養を入れている管も抜いて会いに行ってたよ。」
「そんな状態で、僕は酷いことを言っていた気がする。気づかなかった自分に腹が立つ。」
「もうステージ4で、緩和ケアが始まって、最後に元気を振り絞って、あなたに会いにいった3.31。あなたは隔離室だった。会えないまま彼女は息を引き取った。ノートを残して。」
「このノート、ください!」
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