第24話

3月。

3月1日 ずっと覚えているなんて、ずっと愛しているなんて、大抵が叶わないものなのでしょ

う。特別なんて、思い上がりとあとで知る。それでも僕は君を愛す。 

3月2日 大好きだから、守りたいから、そんな君がいるから、僕は強くなりたい。

3月3日 一緒に行こう。辛い日も、病める日も。一緒なら越えて行けるよ。こんな強い想いが愛が、僕らの宝物。今日はひな祭り給食だ!ちらし寿司にお吸い物。なのにおかずも豪華!デザートはひなあられ。君も食べてるかな?僕たちの子どもが生まれたら、ってまだ遠い未来だ。それまで生きようかな。

3月4日 ここまで告白に触れなかったけど、やっぱり気になる。どうして君は、僕から逃げる

のだろう。嫌われているのかな。精神病んでるやつと可愛い子が付き合える訳ないか。 

3月5日 死にたい気持ちが、君のことを考えるとしぼんでいく。君は僕にとって、愛しいひと

だよ。小学生なのに、病むと大人びる傾向があるのは、僕も君も一緒だね。身体の病気も心の病気も神様は悟りの道に進ませてくれる。

3月6日 気持ちが舞い上がって、自意識過剰になったら、自分のことも、世界のことも、客観

的に見られなくなる。現実に戻って気づいたときには老いている、なんてことにならないよう

に頑張る。

3月7日 気になったこと。君はこの前まで明るさとポジティブ思考の塊だったのに、僕が告白

したとたんに、気持ちが冷めたかのように元気がなくなった。付き合いたくはなかった、友達

のままがよかった、のかな? 

3月8日 君は僕をどう思っているのか、いつまでたってもわからない。

3月9日 病気が進んだのかな?元気そうだったけど。僕は君の何を知っているのだろう。何も

知らない。いつも可愛い君の笑顔を思い浮かべて。 

3月10日 まだ子どもなのにこんな喋り方、文章だけどちょっとキモイよな。君の書く内容は

僕に元気をくれる。今月は、僕も君に元気をあげたい。今まで死にたい、辛い、聞かせてばか

りだった。君はよく受け入れて、すごく温かく返してくれたね。ありがとう。

3月11日 君が生きて、病気が治って、一緒に遊びに行こう!僕は今まで引きこもりだったし

君は病院育ちだ。引きこもりはともかく、お互い好き好んでやってた訳じゃない。外へ!

3月12日 僕の病気は、心の問題。でも、頑張ってなんとかなるなら、とっくになんとかなっ

てる。それを逃げる、とか、甘え、とか、努力不足、とか、そう言われて、もっと追い詰めら

れて死にたくなった。 

3月13日 君ともっと早く出会っていれば、生きづらくても、君がいるから、僕は病気にならなかっただろうな。いや、病気にならなかったら、ここの屋上で君と巡り逢うことも、なかっ

た。全て、奇跡だね!

3月14日 君の病気が早く治りますように!僕を元気にしてくれた君に、僕は祈ることしか出

来ない。でも、このノートを読んで、今までの僕より楽しい僕の話を聞いて笑ってくれたらい

いな!ちょっとずつ、進んでいこう! 

3月15日 僕は前にちょっとずつ進んでるよ!元気になって、ルンルン歩いているから主治医

の先生も驚いて、躁になっていて抗うつ薬を入れるとかいうから、君への想いは胸の中にしま

っているようにしたよ!ノートのことは、言ってない!

3月16日 自分の部屋。大部屋の4人部屋、の中の自分のスペースで過ごすことが多かったん

だけど、デイルームの食堂で過ごすようにしているよ!主治医は、出来るだけ部屋の外が社会

生活に馴染むため、って言うから。君と外で遊びたいから!早く一緒に退院しようね! 

3月17日 こんな調子だから、抗うつ薬を減らされた。まあ、大丈夫かな。特に今のところ何

もないよ。

3月18日 やっほー。薬に僕は敏感みたいだ。僕の主治医は美人だけど厳しく、一方的で意見

を聞いてくれない。様子をみて、判断しているけど、状況的には的確でも、僕の心境的には手

遅れだ。

3月19日 ああ。また、希死念慮。死にたい、死にたい。しか言えない。君のことを思うと自

殺未遂に至らなくなったのがすごい。いつの時代も愛は強いんだろうね。

3月20日 主治医が気をきかせてくれたのか、薬の調整が始まった。たしかに、君への想いが

大きすぎたとしても、別で、病的にハイテンションだったと振り返る。美人の主治医は、頭も

良さそうだ。冷たいけど。 

3月21日 可愛くて僕が大好きな君のことを思うのは、年頃として普通。ちょっと早いか?

そういうのは思春期、なのか。もうそこまで、心は成長したかな。勉強は落ちこぼれだけど。

文章はまあまあ書ける。そういや君と最初に出会ったときそう話したね。懐かしいなあ。 

3月22日 ずっとそばにいたい。死にたい気持ちも収まってきた。 

3月23日 君は何をしたら喜んでくれるのだろう? 

3月24日 君の存在のことは、主治医には言っていない。どうせ言いがかりをつけられるし嫉妬されるよ!ジョークを言えるくらいに、ちょっと復活。

3月25日 元気が出てきた。薬なしで生きられないなんて、僕は弱っちいなあ。でも、この病院にいるほとんどの患者は、きっとそうかな。病気は気づきをくれる。不幸は幸せの尊さを教えてくれる。辛いことも、辛いだけじゃない。今まで君が僕にくれた心。 

3月26日 試練は人生を結果的に豊かにする、幸せばかりだと幸せに気づけなくなる。僕もそうかとも思った。でも、幸せばかりの人生が、一番幸せなんじゃないか、って。どんどん幸せの感度のアベレージが上がっていっても、それを叶えるために自分が努力すればいい話だ!ただのひと任せにしたら、また不幸になるし、幸せには努力を続けることが必要。だから幸せばかりの人生は、どんどん自分を成長させる!幸せになるために!

3月27日 毎日会えたらいいのにな。君もそう思わないかな?告白、断られたんだった。 

3月28日 僕は君を愛している。伝わっていれば断られてもいいとしよう。諦めきれないけど君の気持ちも大事なことだ。

3月29日 君のことを、いつまでも愛してるよ。どんな関係になったって、僕はこの気持ちを忘れない。君の人生は、君の人生だから。フラれても、相手の幸せを願うのが、本当の愛だと思うんだ!

3月30日 君が大好きな気持ちは、変わらないからね!ずっと君のノートを眺めているよ! 

3月31日






3月31日 私から。 代わりにーー

私のことを思ってくれていたのは嬉しい。でも、暴れても何も解決しない。やり返しのため、感情のまま、そんな今。あなたは、思いを抑えられたり、放てたり、コントロール出来るようになったら、たとえ死にたくなっても気持ちだけで止まって、行動に移さないでいられるようになる。

大丈夫。あなたならきっと、大丈夫。

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