第13話

10月〜。わかりあえないから、わかろうとするんだよ。


10月31日 〜小児科〜

「トリックオアトリート!お菓子をくれなきゃイタズラするぞ!」 

「僕、お菓子持ってないし。っていうか、何?その格好。」 

「ハロウィンじゃん。あなたは仮装しないの?はい、チョコいる?」 

「あ、ありがとう。ここは精神科とは大違いだね。とても同じ建物の中にある場所とは思えな

い。なんか楽しそうで、壁も看護師さんもメルヘンチック。お菓子禁止じゃないの?」 

「お菓子は禁止じゃないよ。ほどほどに食べれるものをみんな食べてる。精神科、って禁止令

が多いよねー。病棟もそっけないし、特に隔離室なんか留置所。すること何にもない。そう思

うと、小児科は天国だよね。院内学級もあるし、付き添いも、出歩くこともゆるい。」 

「小児科はいいなあ。その様子だと、君は精神科も知ってるの?」 

「精神科は、前にちょっとお世話になった。小児科は、ちっちゃい子どもばっかりだからそう

でもしないと、怖くて治療が出来ないよ。それに、重い病気を持ってる子どもには天国、お空

に行くときまで前向きに、楽しく生きてもらいたいじゃん。生き続ける前提、って言っても、

病気は進んでいくばかりの子だって多いから。」 

「君は病気になって、きっと悟れたんだね。」 

「そういうならあなたもそうだよ。青春を謳歌出来ないのは、人生の中で、決して無駄なことではない。」 

「何かよくわからないけど、いいこと言ってる気がする。」 

「そうやって、ちょっとずつわかりあえばいいんだよ。」 

「他のひとの気持ちなんて、わからないよ。」 

「当たり前じゃん!わからないから、わかろうと思うんだよ。」 

「それは、どうして?」 

「んー、ノートに書いた。解決出来るかはわからないけれど。点滴があるから行くね。」

「そっか。じゃあ帰って読むよ。またね。」

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