第11話

第3章 9月〜。僕たちはわかりあえないんだよ。


9月30日交換 〜小児科〜

「あれ?いないなあ。早かった?」 

「わっ!」 

「きゃー!もう、びっくりさせないでよー。」 

「やっとやり返せた!」 

「私が小児癌じゃなくて心臓病だったら死んだかも。あなた殺人犯よ、やめてー。」 

「君が心臓病じゃないと知っている。でも、どっちも大変なんだろうね。」 

「心は気の持ちようだけど、身体は言うことを聞いてくれない。」 

「君は心の病気になったことがないからわからないんだよ。ポジティブ人間には。」 

「ひどい。でも、何もかも真逆だもんね、私たち。そりゃあ理解に苦しんで当然。」 

「君とはわかりあえそうもない。でも、君が悪い訳でも、僕が悪い訳でもない。違いすぎる人

間だから、ってだけ。」 

「そうかな。そういうひとほど、お互いのことを補い合って生きていくんじゃないかな?そう

やってみんな生きているし、だから世界は回ってる。」 

「なるほどね。生きる前提の君からしたら、その考えは正しいし、素晴らしいもの。」 

「あなたは何か楽しいことないの?」 

「ない。君が生きる前提なら、僕は死ぬ前提だ。いつも死ぬことばかり考えている。」 

「それもそれで、なんか大変だね。でも、健康な身体がある、って私はあなたが羨ましい。」

「僕たちはずっとわかり合えない人間なんだ。何もかもが、求めているものが正反対。」 

「私のこと、嫌?ノートやめたい?」 

「ううん。続けたい。僕の、死ぬまでの思い出作りにする。君に手伝ってほしい。じゃあまた

一ヵ月立ったら来るね。」 

「わかった!全面協力するよ!じゃあね!」

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