弔いの月光

月猫

未来の記憶、そして今を生きる自分へ

〜introduction〜

 月の光が一線地に届く頃あちらこちらで悲鳴が聞こえる。

「僕はどこで間違えたのだろう。」

涙を流しながら叫ぶ『未来の僕』の姿が嫌でも目に入ってしまう。

未来を見れば希望が見える?

未来には絶望などない?

未来だけを見続けろ?

「そんなことがあってたまるか!なら今見せられている光景はなんだというんだ!」僕はそう叫ぶ。しかし何も変わらない。

「冷静になって周りを見てみなさい。」

冷酷で冷たい声が頭の中に流れてくる。そしてその声は続ける

「永遠に仲間だと誓った者はどうしたのだ。」

と。僕は我に帰った。確かにこの悲惨な光景の中に仲間の姿はない。それは何を意味するのかは嫌でもわかってしまう。そう、未来の僕は仲間を失っているのだ。

「これを見てお前はどう思う。どう感じる。そしてこの光景を見せてもお前の『意志』は変わらないのか?いつまで盲信的に今を生きるつもだ。」また頭に声が流れてくる。

「なら僕はどうすればいい?」

その声に僕は問いかける。すると最後に声はこう答えた。

「過去を見ることだ。過去を見つめ直し、後悔してこの世を去った者たちを弔い、そして声を聞きなさい。弔いの花が7輪供えられた時月の光が行くべき道を示すはずだ。」

そして僕の意識は途切れた。


〜再会、そして共有〜

 ふと目を覚ますと見知らぬ天井が見えた。

ここはどこだろう。よくSF小説ではここは知らない異世界なのだが、そんなわけがない。

部屋の構造的にここは病院のようだった。

なぜ僕が病院にいるのか心当たりがない。

とりあえず今は状況を把握しよう、病室の外に出るんだ。そしたら何かわかるかもしれない。

なんでこんな冷静かって?そんなの決まってる、今まで生きてきて冷静さを欠いた時ほど危ないことはないと嫌でも知ってしまっていたからね。

 病室を出てみると近くのベンチには仲間の姿があった。ふと目が合った。すると仲間は走って近づいてきた。

「楓!」

僕の名前を呼びながらみんなが走ってくる。

僕にはみんなといつぶりの再会なのか、僕の置かれている状況がわからない。ならば確認することは1つだろう。

「僕はなんで病院で寝ていたの?」

こう僕はみんなに問う。するとみんなは

「今日の生徒会活動中に急に倒れたんだよ!本当に心配したんだからね。」と言っていた。

そうなると僕は生徒会活動中に意識の中であの光景を見ながら僕の肉体は倒れ今に至るというわけか。

「お医者さんによるとね、ただの疲労蓄積みたい!だからすぐ退院できるってさ!」

と怜が僕に話しかける。しかし、そうなると僕の中には疑問が浮かび上がる。あと光景は意図的にあの声の主から見せられたもののはずだ。しかし現実ではただの疲労による体調不良とされている。あの光景はただの悪い夢だったのか?

「過去を見ることだ」

頭の中にあの言葉が思い浮かんでくる。いや、あの光景は本当に未来の光景なんだ。しかしなぜ僕にだけ見せる。なぜもっと世界を動かしうる権力のある人に見せず僕だけに見せるんだ。頭の中でひたすら結論の出ない問題を考え続ける。

「‥で、・えで!、楓!」

渚の声によってまた僕は現実に戻される。

「楓、やっぱ変だよ何かあったの?私たち相談乗るからさ!話してよ!」

と渚は続ける。あの光景を話すべきなのか、本当に話していいのか。僕は思い悩む。そうだ!怜達は大切な信頼できる仲間なんだ!そう僕の頭の中で何かが吹っ切れた。

「実はね、…」

と僕はみんなにあの光景を話す。するとみんなの中で長い沈黙が流れた。最初に沈黙を破ったのは翔だった。

「楓、それは本当のことなのか。もし本当のことならばそんな未来俺は嫌だ、今からでも未来を変える方法はないのか」

あぁ、あるさ。あるらしいんだ、だけど僕にはわからない、、あの声が残した言葉の意味が。

しかし今はみんなを安心させるしかない。

「ある」

短く僕は翔の疑問に答える。もちろんこれはハッタリに過ぎない。しかし余計なことを言ってみんなに迷惑をかけるよりはマシだろう。僕は続ける

「過去を見るんだ、そうすれば未来はまだ変えられる。」

「過去を見るってどうやって、この国じゃ過去の資料なんか残ってない。未来を見続ける国なんだから」

ここで奏が沈黙のあと初めて言葉を口にした。

そう、この国は他の国とは変わっているんだ。未来だけを見続ける。過去なんて見ない。ひたすら前を向いて進み続ける。これが今僕のいる国『黄泉』である。そんな国の中で過去を見るなんて行為が許されるわけもないし、実行することも現実的ではない。

《7輪の弔いの花?》

ふと頭にあの声の言った言葉が出てきた。

7輪の弔いの花。7輪の花。弔いの花。

僕は頭をフル回転させて考える。

あっ、そうだ一つだけその言葉に関係する団体がある。そう、それは黄泉の国のテロ組織、月光猫だ。月光猫のロゴには7輪の花が何かにむけて供えられているようなデザインをしている

しかしその花が弔いの花かなどわからない。

「みんな、月光猫に会いに行こう。」

僕はそうボソッと呟く。

「え?」

「は?」

「お前何言ってんだ。」

「もうボケちゃった?」

みんな反応は様々だが当然の反応だろう。でもちょっと辛い、そう今言ったことを言い換えるなら今からテロ組織に会いに行こうという意味である。つまりこの現代社会の輪から外れて裏の社会に行くということである。そんなことはいくら仲間だからって「そうだね!行こうか!」とはならない。そういう反応になることはわかっている。

僕はこう話を続ける。

「僕が聞いた声の中に『弔いの花が7輪供えられた時月の光が行くべき道を示すはずだ』という言葉があったんだ。7輪の花を供えているものといえば月光猫のロゴじゃない?なら行く価値はあると思うんだ。別に僕は強制したりしないよ。これは犯罪と言われてもおかしくないことなんだから。でもみんなの意見を僕に教えて欲しい」

また長い沈黙が流れる。

《行こう》

4人の声が揃った。

「一つ一つ解決していかないとね!」

と怜が言うと

「行かなくて後悔しても遅いから」

と奏も続ける。

「私たちの未来のために!」

「俺たちの将来のために!」

渚も翔も続ける。

そうだ僕たちは一心同体なんだ。

今欠けるなんてことはあっちゃ元も子もない。

「みんなで行こうか」

僕は言う。みんな頷いてくれた。

「そうだ!目的とか忘れないように今の自分たちに手紙を書こうよ!」

奏が提案をしてきた。

「賛成」

「いいと思う!」

「やろう!」

みんな賛成してる!

「じゃあ書こうか!」

僕が続ける。

そう、これは定められた未来を変える物語。

さぁ今から始めるさ僕たちの未来を守る物語を。


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弔いの月光 月猫 @Rafa0709

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