発見
「どこで」
思わず、大きな声で聞いてしまった。
すると、彼も驚いたが話をしてくれた。
職場で知り合った人がその香水を使っていた。
持っていた香水瓶からも嗅いだから覚えていた。
これはどこにも売ってない特注品だと嬉しそうに言っていた。
それを聞いて、僕は泣きそうになった。
僕と居たら当たり前にある香りで、今さら話題にしない話だったから。
「そんなに、いえ、この香水はだから販売しないんですか」
「迷っているんです。ただ、今は探すために使っています。だから、販売はしない方が良いかと考えています」
「そうですか。では、販売するとなったら教えてください」
「では、連絡先を」
そう言うと、彼は名刺入れを取り出そうとした。
だが、無かったのか申し訳なさそうにスマートフォンを取り出し、
「あぁ、すみません。癖で」
と、恥ずかしそうに笑っていた。
「個人の連絡先になるんですが、大丈夫ですかね」
「えぇ。実は僕もお店が休みで個人の連絡先になっちゃうんですよ」
「奇遇ですね」
彼は仕事を辞めて、名刺が無いのを忘れていたらしい。
「数日後から、露店になるんです。また、良かったら来てくださいね」
「それはめでたいですね。是非、お伺いします。では、また」
「はい、お待ちしております」
そう言って、彼と別れた。
それから数日がたって、露店が出せるようになった。
香水を販売していると認識されることは大きいようで、お客さんが増えた。
そして、サンプルに気づき知っている人も。
その多くは、彼女を知っている人だった。
市役所で勤務していたからだろう。
市役所での話を聞かされる。
そこ以外で、この匂いを嗅いだという人がちらほら現れるようになった。
「この香り、1か月前ぐらいに嗅いだ気がする」
「本当ですか。ちなみにどこで」
「確か、そこの辺りだと思う。なんせ1か月前だから、曖昧だけどね」
「どんな、どういう状況でしたか」
「なんだ…、探偵みたいに聞いてくるじゃないか。訳ありか」
「はい、探しているんです」
「そうか、頼りになるか分からんがな。確かな、誰かが歩いてたんだよ」
その人の話によると、街を歩いてたら誰かをみんなが避けていた。
避けられている人を見ると、何変哲のない男性だった。
何故かと近づくと、この香水の香りがした。
頭から被ったんじゃないかと思うくらい匂いがしたという。
「この香水の宣伝かと思ったが、違うのか」
「えっと、まぁ、そんなところです」
そういった会話をし、お礼にサンプルをいくつか渡した。
ここなら、その人を見たという証言が得られそうだ。
あの日、街で香りが広がった。
その情報で、調査が進むだろう。
依頼をしていた探偵に連絡を入れて、その男性を探し出してもらおう。
その人は確実に、彼女の死に関わっているのだから。
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