ネックレス盗難事件
時は二時間程前に遡る。
女王は自室で三人の側仕えと身だしなみを整えていた。女王は幾つかあるネックレスから赤の宝石のネックレスと、青の宝石のネックレスのどちらを着けるか手に持って悩み迷っていた。
「女王陛下、朝食の支度が出来ました。国王陛下もお待ちになっておられます」
扉の外からの声に女王はとりあえず赤い宝石のネックレスを着ける事にし、青いネックレスを側仕えの一人に渡して二人の側仕えを従えて自室を出た。
その後直ぐにネックレスを渡された側仕えは女王に追い付き、その後今に至るまで女王の側を片時も離れなかった。
朝食を終えると女王は気が変わったのか、赤い宝石のネックレスから青い宝石のネックレスに換えようと自室に戻った。
その時に青い宝石のネックレスが無いことが発覚した。まず疑われたのはネックレスを渡し後から合流した側仕えであった。
しかし側仕えの服は盗難防止の為にポケットは無く、首にもネックレスは掛かっていなかった。それに何処か別の部屋に隠すにしても時間は無く、女王が部屋から出てから直ぐに合流した。
部屋の中も隈なく探したが見つからず窓も閉められおり窃盗犯が窓から出て行ったとも考えづらい。
女王の自室の前には常に兵士が二人待機しており、女王が出て戻ってくる間に部屋に訪れたのはシーツを交換しにきた使用人の少女だけである。
側仕えは確かにネックレスを箱に戻したと証言した。そうなると次に疑わしいのはシーツを交換しにきた使用人だけであり。使用人が出て行く時に交換したシーツを持って部屋から出てきた。そのシーツの大きさはネックレスを隠して持ち出すには十分過ぎる大きさである。
今使用人は窃盗の容疑者として取り調べを受けており、使用人の部屋も隈なく捜査されている。しかし肝心のネックレスは未だに見つかっておらず使用人も犯行を否定している。
「それが今分かっている事件の内容だ」
ガーディガンの説明をノゾムは真剣に聞いていた。
「どうだ?何か分かったか?」
国王はノゾムに語りかけた。その声はどこか挑戦的でやれるものならやってみろと言った具合だ。
「まだ少し情報が欲しいですね。最後にネックレスを仕舞ったのはどなたですか?」
ノゾムは女王の側にいる三人の側仕えに質問した。その中の先程太ももを押さえていた側仕えが手を上げた。
「貴方でしたか。女王陛下が部屋から出た後に何処にも寄っていないのですか?」
「はい、私が部屋から出た時にはペザメント様はまだ通路を歩いていたので直ぐに後を追い後ろにつきました。それは兵士や側仕えも証言してくれます」
「ありがとうございます」
ノゾムが側仕えに質問している時に玉座の間の扉が開かれた。
「容疑者を連行してまいりました」
数人の兵士が使用人である少女を連れてきた。少し前に進むと床に座る様に命令され、少女はそれに従い床に座った。
少女は長い黒髪を綺麗に束ねており、年齢は18歳程だった。その顔は可愛らしいが容疑者として疑われている為焦燥していた。
「ノゾムよ。その者に質問する事を許可する」
「ありがとうございます」
ノゾムは国王に頭を下げてお礼を言った。
「まずは名前をいいかな?」
ノゾムの質問に少女はオドオドと答えた。
「キャミーソーと言います。周囲からはキャミーと呼ばれています」
「そうかじゃあキャミーさん、貴方は女王陛下のネックレスを盗んだ容疑をかけられているが何か弁明はあるかな?」
「私はやっていません。ネックレスの事も今日初めて知りました。シーツも直ぐに洗濯場に持って行ったのでネックレスがあっても隠す事は出来ません。それに平民の私がネックレスを盗んでも誰にも売れません。必ず出所を疑われます」
「なるほど、キャミーさんの言い分は分かりました」
ノゾムはキャミーの服を隈なく見て何か納得した様であった。そして振り返り国王を見た。その顔は自身に満ち溢れている。
「国王陛下。そして女王陛下。ネックレスの隠し場所が分かりました」
ノゾムの発言に玉座の間は一気に騒がしくなった。誰もがこれだけの情報で分かるなど思ってもいなかった。
「本当なのかノゾムよ」
「信じられないわ、それで私のネックレスは何処なの?」
「部屋の様子も調べても良いのだぞ?」
国王も女王も信じられないと言った顔である。
「いいえ結構でございます。今からパンモロの様に事件を暴いてご覧にいれましょう」
ノゾムの宣言に周囲は大いに沸いた。ただ一人冷静な人物がいた。キャミーである。
「え?ん?パンモロ?なんて?」
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