パンツも真実も丸見え
国王は皆を落ち着かせた。
「鎮まれ、鎮まれ、それでノゾムよ、いったい何処にネックレスがあると言うのだ」
国王も落ち着かない様子である。
「ネックレス場所は犯人が分かればおのずと判明します」
「では犯人は誰なのだ、そこの使用人ではないのか?」
国王は期待が高まりソワソワしている。周りのペプラム、ガーディガン、兵士に側仕えも犯人の正体を知りたがっている。
「いいえ、キャミーさんではありません。彼女は隠していません」
「それではいったい誰が」
ノゾムは一息ついた。その瞬間改めて自分の推理が間違っていないか確認するのだ。
「犯人は貴方です」
ノゾムは犯人を指差した。皆が指先の方向を見る。そこには女王の側仕えがいた。その側仕えはネックレスを仕舞い、最後に部屋から出てきた側仕えだ。
玉座の間に動揺が走った。誰もが信じられないという顔をしている。
「マリア……まさか貴方が……」
「違いますペザメント様!私はやっていません」
マリアと呼ばれた側仕えは必死に否定している。そしてマリアはノゾムを睨みつけて怒鳴った。
「私が盗んだとしたらいったい何処にネックレスがあるのですか!私は直ぐにペザメント様の下に追いつきました。何処かに隠す時間は無かったのよ!ペザメント様の部屋も隈なく探してけど見つからなかった」
「そこが間違いなのです」
「そこって何処よ!」
「ネックレスはこの王宮の何処かに隠されている。みんなはそう思っています」
「そう!だから城の兵士達は王宮中を探しているの!そこの女が隠した部屋を言えばそれで終わりなの!」
「王宮を探した所で見つかりません」
「勿体ぶらずに早く教えてくれ!」
遂に国王が口を挟んできた。うずうずして体が前のめりになっている。
「ネックレスはマリアさん、貴方が今も持っているのです」
ノゾムの推理に誰しも顔を見合わせて混乱している。
「何を言っているの!この服にはネックレスを隠す様なポケットは付いてないの!それに見て!」
マリアは胸元のボタンを開けて首を見せた。
「ほら隠して着けてもいない!私が隠すなんて出来ないの!これで身の潔白を照明出来たでしょ」
マリアは必死に弁明している。周りの人間もそうだよな、無理だよな、と呟いている。しかしノゾムは確固たる自信のもと推理を発表している。
「あるじゃないですか、女性だけが隠せる場所が」
「隠せないわ!いい加減にしなさい!」
「本当に自白してくれないのですか?」
「だから私はやってない!」
ノゾムは一つため息を吐いた。その顔は諦めた様な顔つきである。
「本当は公衆の面前でこんな事はしたくないのですが」
「何をするの!」
「パンツも真実も白日の下に晒せ!」
ノゾムの目つきが変わった。周囲に緊張が走る。終始穏やかな表情であったノゾムの目つきが鋭いものに変わったのだ。
ノゾムは両手を胸元の前で叩いた、パン!
次に両手の人差し指と中指を立てて目の前に持ってくる、ツー!
両手の親指と人差し指で丸を作った、マル!
そして最後に両手の指を曲げる、ミエ!
「パン!ツー!マル!ミエ!」
ノゾムがそう言いマリアを見た。すると不思議な事が起きた。マリアのスカートが突然捲れ上がりパンツが丸見えになってしまった。マリアのスカートはまるで強風に煽られて反対開いてしまった傘のようになっている。
しかし驚くべきはそこでは無い。マリアの太ももに青い宝石が燦然と輝くネックレスが巻き付いているではないか。
「私のネックレスが!」
女王も驚き、パンモロの騒ぎではない。誰もがこのお色気シーンに興奮する事なく、太ももに隠されたネックレスに驚きを隠せないでいる。
驚愕したマリアの顔がスカートが戻ると同時に現れた。
「これが事件の真相です。スカートを履いている女性だから出来るトリックです。マリアさん、これでもまだやってないと言いますか?」
「そんな……私は……」
マリアはヘナヘナとその場に座り込んだ。その姿を見てガーディガンは慌てて兵士に指示を出す。
「連れて行け」
ガーディガンの指示に従い兵士はマリアを両腕を抱えて連れて行った。マリアは力無くうなだれてズルズル引きずられている。
「これで事件解決ですね」
ノゾムは満足気だが周りは動揺して事態が飲み込めていない。
「スカートが……あんな魔法見た事ない」
ペプラムが呟いた。
「言ったでしょ?パンツも真実もモロ出しに出来るって。僕はパンモロさせる事が出来るんです。それが僕が持っている特別な力です」
そう、これが下木ノゾムの特殊能力なのである。この特殊能力を使いノゾムは数々の難事件を解決してきた。これが下木ノゾムがパンモロ探偵と呼ばれる本当の所以なのである。
ここで国王が一つの疑問を口にした。
「スカート中に隠すなら使用人も出来るはず。何故使用人ではないと考えたのだ」
「キャミーさんは床に座りました。その時太ももにネックレスが巻かれていれば必ずそこに膨らみが生まれます。しかしキャミーさんにはそれが無かった。だから容疑者から外しました」
「なるほど、しかしそれならマリアは立っていたから服の膨らみは見えない筈だ」
「その通りです国王陛下。ただヒントはありました。僕がパンモロ出来ると言った時マリアさんは太ももを押さえました。これまでの経験から女性はパンモロ出来ると聞くと股の部分を押さえます。マリアさんは不自然に太ももを押さえました。その時に僕は違和感を感じたのです」
ノゾムの推理に女王が口を挟んできた。
「ちょっと待って、パンモロ出来ると言ったのは勇者召喚した直後、その時はまだネックレスが盗まれた話はしてなかった筈。その時からマリアを怪しんでいたの?」
「たまたまですよ、ほんの少し違和感を感じたのを覚えていただけです」
ノゾムは謙遜した。そんな訳が無いのだ。ノゾムは常日頃人の細かな行動を観察している為マリアの不自然な行動を見逃さなかったのだ。
「素晴らしい、名探偵の名に相応しい推理であった」
「ありがとうございます」
国王の労いの言葉にノゾムは深く頭を下げた。
「皆の者!下木ノゾム……いや、パンモロ探偵に賛辞を!」
国王の言葉に兵士達は声を上げた。拍手がノゾムを包み込む。
「「パーンモロ!パーンモロ!パーンモロ!」」
兵士達の賛辞にノゾムは照れ臭そうにはにかんだ。玉座の間はこの国に降り立った名探偵を祝福した。誰もが笑顔でパンモロ探偵を迎えた。
ただ一人キャミーを除いては。
「なにこれ……」
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