勇者?パンモロ探偵です

ノゾムが魔法陣によって転移されたのは玉座の間であった。周りには兵士が並んでおり、玉座には白い髭を蓄えた白髪の王と長い金髪の女王が座っていた。

「成功しました陛下!」

 魔法使いの様な老人が王に嬉しそうに報告した。しかし王はノゾムを疑う様な目で見ている。

「ペプラムよ、本当にこの者が魔王を倒す勇者なのか?」

「はい、確かに勇者召喚の魔法陣は発動しました。この者は必ずや王国に勝利をもたらすでしょう」

 魔法使いペプラムの言う事に王はまだ納得していない。それもそのはずノゾムはお世辞にも体格がいいわけではなく、細身でその顔も強さからかけ離れた穏やかなものだ。

「其方、名はなんと申す?」

 王はようやくノゾムに語りかけた。ノゾムはこんな状況にも取り乱さず冷静に対応した。

「お初にお目に掛かります、私の名は下木ノゾムです」

「其方は勇者として魔王を倒す力があるのか?」

「いいえ、私はただの探偵です。戦いは専門外です」

 ノゾムの言葉に周囲はざわついた。

「ペプラムよ、勇者では無いと言っているぞ?本当に成功したのか?」

「その筈です、この魔法陣は特別な力を持つ者のみ反応して転移させます」

 ペプラムは焦っている。王の御前で失敗は許されない。ペプラムは問い詰める様にノゾムに質問した。

「タンテイとはいったい何ができるのだ」

「事件を推理して真実を暴く事が出来ます、まるでパンモロの様に」

 パンモロ、その言葉に空気が一気に変わる。この厳粛なる玉座の間でそんな言葉言っていいはずがない。ペプラムが怒り出した。

「貴様ふざけるでない!何がパンモロだ!陛下の御前であるぞ!」

「ふざけてはおりません。私はパンツも真実もモロ出しにする事が出来ます」

 女王の側にた側仕えの三人はスカートが捲れないようにスカートの上から股を押さえたり、太ももを手で押さえたりした。女性なのでパンモロに非常に警戒している。

「貴様まだ言うか!」

「鎮まれ、ペプラム。ワシが話す」

「も、申し訳ありません。国王陛下」

 ペプラムは頭を下げて、いそいそと後ろに下がった。王は改めてノゾムに質問した。

「にわかに信じられんが事件の真実を暴くと言ったな?その言葉に間違いないか?」

「はい。向こうの世界ではそこそこ名の知れた名探偵、通称パンモロ探偵として呼ばれていました」

「なら今日起こった盗難事件を解決してみせよ。容疑者を連れてまいれ」

 王の命により数人の騎士が外に出て行った。

「事件の調査はガーディガンがしておったな。ノゾムに事件のあらましを話してやれ」

「仰せのままに」

 王の側に控えていた黒髪短髪のガーディガンと言う名の騎士が前に出て事件の概要を話し始めた。

 これが異世界でのパンモロ探偵下木ノゾムの初めての事件である。

 

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