聚落にて

   *

 聚落の内側をシロウを先頭に歩いていると、住人がぽつぽつと顔を出しては退いていく。一度姿を見せたのに、奇声を発して隠れてしまう子供もあった。

 やがて、竹槍を持った若い男が現れて、ミツクニの一行に近づいてきた。

「おい、シロウ。そいつら、お侍が言ってた者たちでねえか」

「ああ、そうだ」

 若い男は、竹槍を持った体勢を整えて、

「シ、シロウ。離れろ。どけよ」

「ゴンザ、落ち着けよ。この人たちは、そんな悪い人たちでねえ。山のおキクに会いに来ただけだ」

「おお。やっぱり、お侍が言ってた者たちだな」

 二人の若い男が言い合っている内に、住人たちが周囲に顔を見せ始めていた。

「よく考えてみろ。山のおキクは悪い人か。おキクに会いに来る人が悪い人な訳ねえ」

 ゴンザは、困ったような顔をして、そのまま動かない。幾らか時間が経って、やがて、

「こっちだ。こっち」

 子供が走って、やって来る。その後を追って、娘と男がやって来る。

「なあ、スケさん。あ、あれは……」

 カクノジョウがスケサブロウを見ると、その目はその美しい娘を追っているようである。

 ゴンザの直ぐ後ろにまで来たその娘は、

「御老公さま、ごろうこうさまではありませんか。チヨです。チヨでございます」

 ミツクニは、

「久しゅう、ひさしゅう。キクどののお子であるか。こんなに立派な娘になって」

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