一行(いっこう)

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 カクノジョウはミツクニに付いて、シュシュンスイが愛したキクが生活する聚落へと向かっている。

 前を歩くのは、スケサブロウ。ミツクニにピタリと付くように歩くのがカクノジョウ。後方に、忍びの心得のあるイワサルという男が、周囲を警戒しながら歩いている。

 スケサブロウは大日本史編纂の陣容の一人である。その傍輩ほうばいの内でも、カクノジョウとは特に仲が良かった。ただの口八丁と見做す者もいたが、決してそうではないとカクノジョウは捉えていた。心の内には優しさがあるし、知らぬ人との意思疏通も得意であることは大なる長所である。

 イワサルの来歴は知らない。ミツクニを含む極く々く少数の者しか知らないのだろう。これだけ、ミツクニと近い関係にあるカクノジョウもスケサブロウも知らないのである。ミツクニが信頼をもって接しているのを見れば、それを知る必要はないことが分かる。

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