第2章:氷雪を冠する少女

第18話:時が少し経って

「ノア、そっち行ったよ!」

「おう任せろ、すぐ追いつく!」


 ロックボアと呼ばれる魔物を連携しながら追い詰めて、俺より機動力があるノアにトドメを任せ俺はサポートに徹することにした。

 命の危機を感じ取っているのか、逃げようとするその魔物に俺は魔法を使う。


氷縛ひょうばく、これで動けないでしょ」

「ナイスルクス、これで――トドメだ!」

 

 ノアが槍を投げ相手の体に命中させたところで狩りは終了。

 近くの村の大人達の依頼で狩りに来たのだが、かなり傷つけなかったし結構いい結果じゃないかな?


 狩った魔物は最近使えるようになった氷属性魔法で保存し俺達は借りた荷車に得物を乗せて村へと帰る。

 その途中、どっちが早く着くかって勝負になり――。

 

「おう坊主共、助かったぞ」

「いいって、小遣い稼ぎにもなるしオレ達も動けて訓練になるからな!」

「はは、ノアは相変わらずだな。で、ルクス坊はどうした? 疲れてるようだが……」

「はぁ――ッはぁ――競争になって、ノアが身体強化で」


 創造魔法で身体強化を再現しているが、やはり燃費が悪いし効果も弱い。

 ゲーム風にいうなら創造魔法使いの強化値が1.2倍でノアならそれが1.5倍って感じ。


 俺も対抗して強化魔法を使ったけど、やっぱり性能の差には勝てなくて俺は今バテていた。


「お前等子供らしくないがたまにガキだよな」

「それ――どういう、意味?」


 疲れすぎて上手く喋れないが、心外だったのでツッコむことにした。

 だけど目の前のよくお世話になってる村人のアロルさんはただ笑うだけで答えようとしない。


「まあいいだろ、ルクス。それより給料くれ給料、結構狩ったし貯まってるだろ?」

「分かってるからそう急かすな――という事でほら、大事に使えよ」


 そう言って俺達にこの世界にお金を渡してくるアロルさん。

 数えてみればいつもより多く、今回の狩った量には見合ってなかった。

 どうしてかと聞こうとしたが先にノアが喋ったことで遮られる。


「やったー! ってなんか多くないか?」

「おまけだおまけ……リリアには言うなよ、多めにやったってバレたら俺が何言われるか分からん」

 

 この人口ちょっと悪いけど、いい人なんだよね。

 前も村に遊びに来た時にお菓子くれたし、決行面倒見がいい……それに孤児院の子供達に慕われてるし、冬とか狩ってきた肉を持ってきてくれる。


「ありがとなアロ爺!」

「俺はまだ三十代だ……爺じゃねぇ」

「別にいいだろ呼びやすいし」

「よくねえわ。まっはやく帰れよお前等家族等が心配するぞ」

「分かってるって、じゃあなアロ爺」

「だから爺じゃ……まぁまたな」


 それから孤児院に少し分けて貰った肉を持って帰ってきた俺達はリリアさんにそれを渡し、ちょっと豪華になった夕食を楽しんだ。

 で、その後で部屋に戻ってきた俺はというと――。


「ツバキ……幻影作るのが楽しいのは分かるけど、部屋に戻ってきた瞬間に同じ顔に出迎えられるのは怖いからやめて?」


 部屋に入った瞬間に自分に出迎えられてなんか特殊な恐怖を覚え、犯人? 犯獣に文句を言っていた。

 俺に叱られた事がショックだったのか、見るからに項垂れたツバキが幻影を消ししょんぼりしたように鳴き声を上げる。


「そこまで気にしなくていいって、反省したんだろ? あ、そうだ今日はお肉あるから食べる?」


 冷凍保存していた肉を魔法で解凍し、ついでに焼いてツバキに渡す。

 それを食べる姿を見ながら俺はツバキの事を考える。


 ツバキが今使える能力、それは幻影を作る事――これのおかげで二ヶ月前の吸血鬼との戦いに勝てたし、かなり実用性あるから練習して貰う分には損はないんだけど……気に入ったからって俺ばっかり作るのは止めて欲しいよね。


 だって素直に怖いし……。


「それにしてももう二ヶ月かぁ」


 ツバキの事をモフりながら少し思い返す。

 そう、ノアの英雄試験からもう二ヶ月が経ったのだ。

 その間に俺は二週間の謹慎を経験し、それからの一ヶ月と半月の間で魔法の勉強を進め、少しだが使える魔法が増えた。


 まあ増えたっていっても、三個だけど……それでも前より強くなったのは確かだ。

 あと変わったことと言えば、リアと文通する様になったぐらいかな。


 一週間に一回手紙を送り合うという事をしていて、今は八回目。

 今日は午前は狩りで書けなかったから、今書かないと間に合わないのでツバキの相手をここまでにして手紙を書くことにした。


 最近あった事や、覚えた魔法の事、あとは趣味とかを書いた手紙を書き、俺はそろそろ来るであろう鳩を待つ。


「ツバキ-今日も鳩くるけど食べようとしちゃ駄目だからね」


 文通用にこの孤児院にやってくる鳩。

 初めて来たときは、ツバキにいただかれそうになるって事件があったからそう言ったのだけど、俺の相棒様は分かっているって言いたいのかちょっと不機嫌そうになった。


「ごめんって、明日遊んであげるから許してよ」


 そう言った途端に尻尾を振るツバキ。

 あまりにチョロくて将来が心配になるが、悪意には敏感だし安心していいだろう。


「あ、鳩が来たね。これお願い――え、今日は手紙があるの?」


 いつもなら俺が手紙を送った五日後とかに返事が返ってくるのに、今回あっちから手紙を送ってくるとは珍しい。

 なんだろうなと思って俺は中身を読むことにした。


「えーっと、要約すると今度孤児院に遊びに来るって感じかな?」


 大体そんな内容が書かれた手紙、断る理由がないから追記:大丈夫遊びに来てねとだけさっきの手紙に付け加え鳩に渡すことにして俺は、今頃部屋で仕事でもしてるリリアさんにリアが来るという事を伝えることにした。 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る