疎外

リュウ

第1話 疎外

 僕はテレビを見ていた。

 この番組は、僕が選んだモノではないのは確かだ。

 だが、僕の目の前にある。

 なぜ?

 テレビのリモコンをせわしなくいじって、チャンネルを変える。

 どのチャンネルもつまらない。

 いつの日か人気のあった芸能人のオーバーアクションのTVショッピング。

 面白くもない芸なのに、支持されたと思い込んでしゃべっているお笑い。

 いつの間にか一般人の代表として澄ました顔をして意見を述べる芸能人。

 この世は、芸人から出来ているのか?

 僕から、時間を奪っていくくだらない番組。

 巨額な宣伝料を手にした為に、同じ人物を使った番組が出来上がる。

 何も思いつかない時は、ペットや子供やアニメでも放送すればいいと。

 これで視聴者が満足すると思っている。

 馬鹿にされている。


 スマホも同じこと。

 僕を無視して画像を動画を送り続ける。

 送る側の利益の為に。

 僕の利益にはならないのに。

 僕のいらない情報を送り付け、僕のパケット料を取り上げる。

 僕は見たくないのに。

 本当かわからない情報を見せられる。

 僕をあるところに誘導するためかもしれない。


 本当に見たいモノを選ぶ権利を犯されている。

 そう、疎外されているのだ。

 疎外された者は自分を守らなければならない。

 生き残るために。

 自分の世界に引きこもるのだ。

 望まない外力から自分を守る正当な行動。


 そんな僕の意見は、誰にも届かない。

 疎外されているから。

 疎外するなら、疎外するがいい。

 僕は、僕の世界を死守するのだ。

 奥に奥に引きこもるのだ。

 深い深い海の底にもぐり込むのだ。

 自分で考える力を鍛えるのだ。

 人間に与えられたモノなのだから。

 絶対に、僕は手放さない。




 病室のベッドに男が寝ている。

 もう、何年になるだろう。寝たままなのだ。

「本人が戻ることを拒否している、意識が戻らない」 

 軽く頭を左右に振りながら諦めたように医者が言った。

 家族らしき人たちが、寝ている男の顔を覗き込んでいる。

「彼は、何を拒否しているのだろうか」

 医者は家族に会釈し、退室した。


 病室の窓から、蒼い空が見える。

 果てない空が、果てない宇宙へと続いていく。



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疎外 リュウ @ryu_labo

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