第3話
「店長その子はいったい…」
二人も突如現れた少女にアーク同様戸惑いを隠せないでいた。
「わからない…が、呼吸もしているし眠っているだけみたいだ。とりあえず、ここに置いていくわけにもいかないし一旦店に戻ろう」
そうして、アークたちは少女を連れて一度店へと戻ることになった。
♢♢♢
スピカが目を覚ますとまず目に入ってきたのは見慣れない天井だった。
「ここは…」
起き上がってあたりを見渡すとベッドわきの椅子に座る女性と目があった。
「おっ、気が付いた?店長ーこの子目が覚めましたよー」
女性の声を聴いて一人の男性が部屋に入ってきた。
「調子はどうだい?自分の名前はわかるかい?」
男性はスピカに気遣う様子で声をかける。
「体調は特に問題ない。自分の名前もしっかり憶えている」
「じゃあ、自分が何で空から降ってきたのか覚えているかい?」
「空から…降ってきた…?」
スピカは男性の言葉に眉をひそめた。
男の言うことを考えてみる。
『この男は私が空から降ってきたといった。私の記憶は宇宙船に乗るときに眠ったのが最後だ。あの時マザーは起きた時にはすでについていると言っていた。私が星に戻ってこないように着陸せずに空から下ろしたのではないだろうか。そう考えると私が空から降ってきたという話にも納得できる』
スピカはこちらを見ている男を改めてみてみる。
『私が下ろされたときにレグルスも一緒に来ているはず。今はこの部屋にはいないようだが、私をこの部屋に連れてくるまで特に止めなかったということはこの人たちは信用しても大丈夫ということだろう』
あまり考え事ばかりをしていて返事をしなければ心配されるだろうとスピカは二人に声をかける。
「なんで空から降ってきたのかは私にもわからない。私が王都に向かっていたことまでは覚えているんだが…」
「なるほど…、まあ本人がわからないのであればどうしようもないな」
どうしたものかと男が頭を掻く。
そんな時、扉の外から誰かが近づいてくる足音が聞こえる。
すぐに扉が開かれ、活発そうな男が新たに部屋に顔を出した。
「あれ、その子起きたんすね。俺はアルタイルっす。この魔道具店の店員っすよ」
アルタイルの言葉を聞いてほかの二人がハッとした表情をする。
「ごめんね、自己紹介がまだだった。私はベガ、アルタイルと一緒でここの店員よ」
「俺はアークだ。この魔道具店の店長をしている」
「私はスピカだ。どうやら、あなたたちには助けてもらったらしい。ありがとう」
四人が自己紹介を終えると、話はスピカがなぜ王都を目指していたのかに移った。
「スピカ、君はさっき王都に向かっていたといっていたが理由を聞いてもいいかな」
「目的は二つあってね、一つは仕事を探しに来たんだ」
スピカはこの星にくる前の調査で知っていた無難な理由を答えた。
「王都にくる理由としてはよくある理由ね」
「もう一つは何なんだい?」
「人の感情を知るためさ」
「人の感情…っすか?」
「ああ、私は生まれつき感情というものがわからなくてね。人の多い王都で多くの人とかかわりを持てばわかるようになるのではと考えたんだ」
三人はスピカの話を聞いて驚いたように目を見開く。
実際には感情がわからないのではなく無いのだが話がややこしくなるのでスピカは少し嘘をつく。
スピカの話を聞いてアークは少し考えこんだかと思うと、何かを決めたかのような顔になった。
「スピカ、そういうことならこの店で働かないか?ちょうどもう一人店員が欲しかったし、行くところも特にないんだろう?この店なら魔道具の修理とかで多くの人とかかわることになるから君にとっても都合がいいと思うんだが」
スピカは話を聞いてアークの提案について考える。
もし、アークの話を受ければ衣食住に関しては問題がなくなるだろう。
それに多くの人にかかわれるというのも大きい。
スピカの願いをかなえるには最高の環境になるのではないだろうか。
「その提案ありがたく受けさせてもらおう、これから世話になる」
そういって、スピカは片手を差し出す。
事前の調査ではこういう時この星の人間はこうしていたはずである。
「ああ、よろしく、スピカ」
アークは笑顔でスピカの手を握った。
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