第2話

星がきれいに見える晴れた日の夜だった。


王都アストラにて魔道具店を営むアークは店じまいをしながら星を眺めていた。


「店長ー、何見てるんすかー?」


店員の一人であるアルタイルが店内から顔を出す。


「いや、星がきれいに見えるなと思って」


「確かに今日晴れてますもんね。おー、すごいきれいだ」


アルタイルは空を眺めながらつぶやく。


今日の星空は思わず声が出るほどの美しさだった。


「二人とも何してるんですか?はやくお店閉めないと帰れませんよ」


そういいながら店の中から女性が顔をのぞかせる。


もう一人の店員であるベガだ。


「いやー星を見てたんすよ。めっちゃきれいじゃないですか、今日の」


「あ、ほんとだ。すごいきれい」


アルタイルに言われてベガも空を眺める。


黒い夜空に輝く星はまるで宝石箱のようで、見る者の目を奪った。


「そうだっ、どうせならもっとよく見えるところに行きましょうよ!王都のすぐそばに小さな丘があるじゃないですか、いまから行きませんか?」


「いいっすね、あそこならきれいに見えそうっす」


「この時間からか…危なくないか?」


ベガの言葉にアークは心配そうに尋ねた。


「大丈夫ですって、最近は衛兵によって見回りもしっかりされてるので、王都から少し出たくらいじゃ心配するほどでもないですよ」


「うーん、まあ大丈夫か」


アークは迷ったが、実際に最近は王都周辺も治安がいいので大丈夫だろうと丘へ向かうことに同意した。


アークたち三人はすぐに店じまいを再開し、終わり次第丘へと向かうことになった。



♢♢♢



「ほら、やっぱり思った通りっ、あんなに遠くまで見えますよ」


ベガが興奮した様子で声を上げる。


王都の付近はこの丘以外には平坦な平原が広がっており建物はおろか木も少ないので、どこまでも夜空が広がっていた。


「ああ、来てよかったよ」


ここまできれいに夜空が見える日は一年にいったいどれほどあるだろうか。


いや、もしかしたら数年に一度見れるかどうか。


「さすがにこの時間だとほかに人はいませんね。昼間だと結構人いるんすけど」


「まあ、この時間だしな」


「いいじゃない、この星空を独占できるんだし」


三人はそう言って笑みを浮かべ、しばらく星空を眺めていた。


星空を眺めていると、まるで星が降っているかのような錯覚に陥る。


この星空を少しでも目に焼き付けておきたい。


そう思って、空を見上げているときだった。


夜空から星のように輝く何かがゆっくりと降ってきた。


「なんだこれは…」


アークは思わず目の前に振ってきたそれを受け止める。


「女の子…?」


それは、星のように輝く銀の髪をした一人の少女だった。







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