第42話 命を謳歌せよ!!

 

「まずい……!! 呪言鎖縛がブチ切れそうだ……!!」

 

 タタラはさらにありったけの魔力をふり絞った。

 

 それでもダイナムのダイナマイトはブチン……バチン……と音を立てて、一本、また一本と超重力の鎖を引きちぎっていく。

 

「エル……!! 俺が時間を稼いでるうちに、皆を連れて安全な場所まで避難しろ……!!」

 

「でも……そんな事したらタタラが……!!」

 

「俺はここを動けねえ……どうせ動けねえなら、全滅するよりお前達だけでも生き残れ……!!」

 


 エルはキッとタタラを睨んでその腰に抱きついて言った。


 

「やだ!! タタラと✘✘✘するまでは絶対離れない……!!」

 

「アホか……!! 大体こんな場面で言うセリフか!?」

 

「だって死んじゃうかもなんだよ!? 死んだらもう✘✘✘も♡♡♡♡も出来ないんだよ!?」

 

「なんで全部性にまつわってんだよ!?」

 

「とにかくやだやだやだ!! タタラとエルで六十九の戯曲を奏でるまでは絶対タタラを死なせない!!」

 

「卑猥極まるNGワードを芸術的に言ってんじゃねええぇええ!!」

 

 その時だった。

 

 ジルがムクリと起き上がり、静かに口を開く。

 

「男女の営みは素晴らしい……」

 


 お前もかーい……!!

 

 顎が外れるほど口をあんぐり開き、タタラは言葉を失った。

 

 その横でエルは勝ち誇ったように頷いている。

 

「タタラよ。命を簡単に投げ出すな」

 

「お前には言われたくねえよ!」

 

「いや。我は妻と子がいる。命を謳歌した。だが、ぬしは死ぬには何も経験しなさすぎる……!! ぬしの正義を貫きたいなら命を謳歌しろ……!!」

 

 それだけ言うとジルは静かに手を合わせて、祈った。

 

「我らを守り育むニルワナの神よ……村を、貴方様をお守りするため……我によろずの精霊を束ねる力を授け給え……!!」

 

「精霊魔法……!! 禁呪……!! 冬虫夏草我が身を糧に……!!」


「おい……!! 何するつもりだ!?」 


 ジルはタタラの方を一瞥すると、爆裂寸前の魔力の塊を睨みつけた。


 それと同時に、ジルの体にじわじわと緑が生い茂り、無数の蔓となって呪言鎖縛の上から覆いかぶさった。

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