第34話 戦う理由

 

「へへへ……直撃の手応え……木っ端微塵になったかな?」

 

 肩にツルハシを担ぎ空いた手で顎をさすりながらダイナムが呟くと、爆煙の中から何かが飛び出してきた。

 

「むむ……!?」

 

 慌ててツルハシを構えると、鋭い斬撃がツルハシの柄を両断する。

 

「誰だおめえ!?」

 

 直ぐ様ツルハシを捨ててダイナムは距離を取って叫んだ。

 

「しがない盗賊さ」

 

 日本刀を構えたタタラがそう言うと、背後のからジルが駆け寄り叫ぶ。

 

「なぜ助けに来た!? 貴様はこの村に関係ない!!」

 

「誰かを助けるのに理由がいるのか? エルの言った通りだ。これは……お前には関係ない」

 

 ジルはそれを聞いて思わず固まった。

 

 言葉以上に、タタラの背中から漂う得体の知れないオーラのようなものが、ジルの心を震わせる。

 

「ふん……!! 盗賊が正義とは恐れ入る……!! だがおいらにも関係ね!! まとめて消し炭になれ……!! 黒色火薬イグニッション・ブラック……!!」


 ダイナムの右手に魔力が集約する。


 同時にタタラの左手にも魔力が集約していった。


「させるかよ!! 重力魔法……黒壁四重奏クアトロ・グラビウォール……!!」


 ダイナムの周囲に超重力の壁が四枚現れた。

 

 オレンジと黒の爆煙は、その壁に飲み込まれるように消えて地面に四角い溝をつくる。

 

「重力魔法……!? おめえ……聖女を攫ったやつだな!?」

 

「さあ? 知らねえな……」

 

 タタラはそう言うと左手を前に出し叫んだ。

 

「グラビトン……!!」

 

 ダイナムの巨体にずしりと何かがのしかかる。

 

 しかしダイナムはそれを腕力で無理矢理はらいのけ、タタラの斬撃を躱した。


「なんだ!? その拍子抜けの魔法は? おいらを舐めてんのか!? 爆裂魔法……爆裂拳ボムナックル」 


 ダイナムは拳に魔力を溜めて大ぶりの右フックを放った。


 タタラはその手に脅威を感じて咄嗟に引き下がる。


 フックが直撃した大木の幹が木っ端微塵に吹き飛んだ。


 それを見てタタラは青ざめる。



「あっぶねえええええええ!?」


「おいタタラ……!! なぜさっきのような強い魔法を使わない!?」

 

 そばに駆け寄ってきたジルが小声で尋ねた。


「それがよ、俺はでかい魔法を使った後クールタイムが要るんだよ……魔力量は足りてても続けてデカいのは撃てない……」

 

 ジルはそれを聞くと拳を固く握り、何かを決心したように前に出た。

 

「今回だけだ……今回だけ貴様と共闘する……我が村の為によそ者が死ぬ……それは恥ずべきことだからだ……!!」

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