第32話 急襲

 

 報告と同時に村の方から爆発音が響いた。

 

 タタラと頭骨を被ったジルは同時に小屋を飛び出し、広がる光景に目を疑う。

 

「何だこれは……? 我の村が……!!」

 

「ひでぇ……一体誰が……?」

 

 

 村の入口の方から響く怒号で、その答えはすぐに明らかになった。

 

「我々は新王アダムスが率いる親衛隊、骸の骨スカル・アンド・ボーンズである……!! 貴様たちが人喰族であることはすでに分かっている。これより勅令により貴様たちを連行し処罰する。大人しく我々に従え!! 抵抗するものはこの場で処刑する!!」

 

「馬鹿な……!? こんな辺境の村になぜ新王の親衛隊が!?」

 

「どうでもいい……!! 我の村に手を出したことを後悔させるのみ……!! 二度と手出しする気が起きぬようにな……!!」

 

 ジルは槍を手に取ると、大声で村に呼びかける。

 

「戦士たちよ!! 武器を取れ!! 我らの恐ろしさを思い知らせるぞ!!」

 

 方々で応答の雄叫びがあがった。

 

 見ると槍や斧を構えたセデック・バレーの戦士たちが陣形を組んで親衛隊の雑兵を追い詰めていく。

 

 容赦なく槍で心臓を突き、逃げる敵のアキレス腱を手斧で切り裂き引きずり回す様は、まさしく食人族のそれだった。

 

 

「見たか!! セデック・バレーの男は皆屈強な戦士!! 国王軍にも負けはしない!!」

 

 

 ジルがそう言ったのと同時に、再び途轍もない爆発音が響き渡った。

 

 爆心地の周囲には手足を失って苦しむ三人の戦士たちが地面に倒れて呻いている。

 

「パイパイ!! オッパ!! チッチー!!」

 

 ジルは悲鳴にも似た叫び声を上げて負傷した仲間のもとへ向かった。

 

 野生のジャガーのように俊敏な動きにタタラは目を見張り、同時にどうしても考えてしまう。

 

 この村のネーミングセンスはどうなってんだよ……

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