第31話 思いがけない問答
相容れぬ正義……
その言葉にタタラは衝撃を受けた。
人食いは悪だと、やめるべきことだと、無意識で思っていた。
しかし当の本人達は確固たる正義をもってして食人族であることに誇りを持っているらしい。
不穏な空気と緊張が小屋の中に広がっていった。
村長までもが白く濁った瞳に敵意の火をちらつかせている。
「タタラ。今度は我が問う番だ。おぬしの正義は我らの正義を否定できるほど優れているのか? 新王の正義を否定できるほど高級なものなのか?」
「俺の正義は……」
タタラが続きを言い淀んでいると、エルがタタラの前に躍り出て言った。
「タタラは自分の為に戦ってるんじゃない! タタラは自分が悪者呼ばわりされても、危ない目にあっても、率先して誰かに苦しい思いをさせる相手に立ち向かう! タタラの正義は、自分を
「エル……」
エルは振り向いてニッっと笑って見せた。
気をよくしたエルはジルに人差し指を突きつけて強気に言う。
「あなた、食べられる人のこと考えたことある!? ないでしょ? 絶対怖いよ!? おしっこチビッちゃうよ!?」
「な!? 我は勇敢な戦士で狩人……!! 絶対にチビらぬ!!」
「そんなの関係ない!! 絶対チビるね!!」
ジルは毅然とした態度で答えるも、エルは勝ち誇った顔で言い切ってみせる。
それに腹を立てたのか、ジルはわなわなと震えながら槍に手をかけ叫んだ。
「ならば……互いの片足を少しずつ食い合い、どちらが先に音を上げるか勝負だ!!」
「そんなの慣れてないからエルが不利じゃん。あっ……さてはそれが狙い!? ずっるーい!!」
怒りで地団駄を踏むジルと、クスクス笑うエルを見てタタラは思う。
こいつ……本当に聖女なのか……?
その時だった。
小屋の入り口が勢いよく開き、見張り番が大声で言う。
「大変です……!! 何者かが村に攻め込んできました!!」
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