第26話 なんかヤバい豆
肩で息をするタタラを尻目にエルは上機嫌だった。
高山地帯を抜けてたどり着いた林をチョロチョロと動き回っては木の実やキノコを集めては思い出したように破顔する。
うへへぇ……
タタラのお姫様抱っこウマウマ〜
ここは精のつく手料理で一気に距離を縮めるチャンス……!!
灌木にもたれてタタラが休んでいるとショッキングピンクの湯気が漂ってきた。
ギョッとして元凶に目をやると、頬をピンクに染めて目を潤ませたエルが両手で器を持って佇んでいる。
湯気を吸い込んだらしく、どうやらすでにトリップしている……
「タタラのために作ったお? アーンしてあげるね?」
いやいやいやいやいやいや……
これ食ったらオーバードーズで死ぬやつじゃね!?
タタラは顔を引きつらせて後ずさった。
その分だけジリジリとエルは距離を詰めてくる。
「怖くないでちゅよ〜? フーフーしますからね〜?」
「やめろ!! フーフーするな!! 湯気がこっちにくる!!」
「えへへ……バレちゃいました?」
「本気か!? このトンデモ性女……!?」
「既成事実を作ればこっちのもんですぅ……」
「発想が聖女のそれじゃねえ……」
その時だった、動物の頭骨を被った男が大慌てで駆け寄ってきた。
「何してる!? まさか
男は手に持った槍でエルの手から器を叩き落として叫ぶ。
「知りませ〜ん。かわいいハート型のお豆さんが生えてたので効きそうだなって……」
「き、効きそう……?」
男が明らかに引いた様子でそう言うと、エルはニッコリと笑って頷いた。
「おぬし達どういう関係だ?」
「兄妹だ……」
「妹に求められているのか!?」
「いや……料理を作ってからおかしくなったんだ……」
タタラが苦し紛れにそう言うと、男は胸を撫で下ろして言った。
「そうか……ビンビンビーンの影響で間違いないだろう……村に案内しよう。解毒剤を飲ませないと、この性格が生涯固定されてしまう……」
さらっと恐ろしいこと言うな……
へぇ……一生涯……
タタラとエルはそれを聞いて、それぞれ別々のことを考えるのだった。
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