第24話 それぞれの旅立ち
一人、また一人と盗賊の身なりを脱ぎ捨てていく。
ある者は商人のように、ある者は木こりのように、ある者は旅人を装って、ホルス山脈を下っていった。
「サンボ。ダリィ。お前たちには特別な任務がある」
タタラが言うと二人は顔を見合わせて笑った。
「そんなこったろうと思ったぜ」
「俺、頭使う任務は無理っすよ!?」
「ダリィは定住せずに方々を巡ってあいつらの様子を見てやってくれ。悪さしたり、修行をサボる奴はボコボコにしろ」
「タタラさん……すっかり盗賊のお頭が板に付きましたね……w」
「うるせえ! サンボには引き続き諜報を頼む。奴らの目的を探ってくれ。分かり次第俺に報告を頼む」
「うへぇ……簡単に言ってくれるぜ」
サンボは大きなため息をついて言った。
「すまん。だがお前にしか頼めない」
タタラがそう言うとサンボは顔を上げて諦めたように笑う。
「はいはい。あんたに頼まれちゃ断れねえですよ。それより、お頭は何処に?」
タタラはわずかに俯いてから口を開いた。
「俺は村を巡ってベヒモスを探す。あいつは戦力になる。それに、あんな別れ方じゃ寝覚めが悪りぃよ。並行して村や町の権力者を説得して回るつもりだ。町の入口に、滞在なら線一本、旅立つ時は線を二本引いておく」
「目立ちませんか……?」
サンボの顔に影が差した。
「ああ……だが、俺達だけじゃ国を相手には出来ない。そのための布石、ニアレスト王を取られた今、草の根活動で民衆の意識を変えるしか術はない」
「んっんん!!」
その時エレノアが咳払いして前に出た。
三人が首を傾げているとエレノアが胸を張って言う。
「それならこの聖女エレノアにお任せを! わたしの出す聖なる波長は人(主に男性)を善良にする力がありますわ! そうなればきっと、タタラ様の説得にも応じてくださるはずです!」
「まさかそれでニアレスト王国は……?」
エレノアは舌をチロリンと出していたずらっ子のような笑みを浮かべて見せた。
三人は愕然として言葉を失ったが、タタラが気を取り直して話を切り出す。
「不穏なワードが混じってた気がするが……エレノア、俺達に協力してくれるか?」
「もちろんですわ!! 推しのお願いを聞かぬは乙女の恥!! 何処までも……地獄の果まで付いてきます!! 二人旅ぐへへ……」
「……」
「それじゃ、お頭もご無事で!」
「俺も適当に情報収集しとくんで、何かあったら報せに行きますよ!」
こうしてサンボとダリィも下山し、とうとうタタラはエレノアと二人だけになった。
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