第19話 誘惑のマリア
サンボの周囲を白煙が覆った。
大多数が驚き惑う中、紅いローブの女と隊長らしき男はすぐさま反応を見せる。
しかしサンボの方が一手早かった。
「散……!!」
その掛け声と同時にサンボの姿形をした煙が一斉に四方八方に駆けていく。
サンボもまた自身の身体に煙を纏わせ
「ちっ……どれが本物!?」
女が舌打ちして杖を下げる。
「俺がやる……」
そう言って男は背中に背負った金属製の長弓を構えた。
「
男が天に向かって弓を引くと光の矢が上空で分裂した。
矢は放射線状に広がり羊雲達を貫いていく。
路地裏に飛び込み二つ目の角を曲がったサンボは追手を確認するために振り向いた。
「追手は無しか……? ……!?」
その瞬間上空から光の矢が襲いかかる。
気配を察知して咄嗟に上を見上げたサンボは脳天を貫かれる寸前で身体を捻って串刺しを避けた。
しかし矢は脇腹を貫き地面に刺さると、すぅ……と光子になって消えてしまった。
「むぅぅん……」
サンボは傷口に破った袖を押し込んで止血すると血痕を残さぬようにゆっくりとその場をあとにした。
「全弾命中だ」
「それで? 殺ったの?」
「さあな。それは今から調べる。マリアはこのまま通過儀礼を済ませてくれ。俺は部下達に死体を探すよう命令したら、このことを王に報告してくる」
「わかったわ……でも面倒くさいから一気に終わらすわ」
マリアはそう言って台の上に上ると、フードを脱いで志願者達を見渡した。
驚き戸惑っていった志願者達は、突如壇上に現れた美女に視線を奪われ静かになる。
「狼狽、混迷、誘惑、堕落。罪深き反逆者の末裔は尚も知恵の果実を求めて荒野を彷徨う……!!」
詠唱とともに紅い光の文字が女の周囲に現れ渦を描いて広場に広がっていった。
「なんだこれ?」
「あの姉ちゃんの魔法か!?」
「おい……なんかヤバそうだぞ?」
「逃げよう!!」
志願者達は再び混乱の只中に突き落とされたが、マリアは妖しい微笑を浮かべて叫んだ。
「洗脳魔法……異端の烙印……!!」
同時に逃げ惑う志願者達の額に紅い紋様が襲いかかる。
志願者達は次々と物言わぬ傀儡へと成り下がり、やがて広場は静けさに包まれた。
「ようこそ
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