第16話 駆け巡る


 タタラ一行がアジトに戻った翌朝。


 世間を震撼させる報せニュースがファンタジアを駆け巡った。



『ニアレスト王、秘密裏に世界の崩壊を目論む』



「なんだこれ!? どういうことだ!?」


「なんでも世界を破壊しうる兵器を開発していたらしい……」


「あの慈善家で名高いニアレスト王がか!?」


「どうりでおかしいと思ったぜ……ファンタジアに善人がいるわけねえよ……」


「善人面したサイコ野郎だったんだな……」



 そして見出しに載ったもう一つの報せ。


『新王アダムス戴冠。国名をニアレストからセントラルドグマへと改める』

 

 人々は新たな王となった反乱軍のリーダーに興味津々だった。

 

 一体どんな施策を打ち出すのか?

 

 重税が課されるのではないか?



 そんな不安の眼差しが戴冠式の会場に溢れかえる。

 

 アダムスはそんな城下の広場を満足気に見下ろすと、立ち上がって言った。

 

「静粛に!! 我こそが新王アダムスである!! そなた達の心配事は理解っている。今ある平和が砕かれることであろう?」

 

 どよめきが広場に広がるも、アダムスが王笏おうしゃくで地を打つと辺りは静まり返った。

 

「安心してほしい。今まで通り国は安泰だ。なぜなら、今までの素晴らしき政策は全て王妃であるエリザの考えだからだ!!」


 アダムスの言葉と同時に、背後からエリザが現れ広場が歓声に包まれた。


「エリザは愚王ニアレストの計画を知り私に打ち明けてくれた。その勇気と気高さを讃え、私はエリザを妻として迎え入れる!!」

 

 再び広場に巨大な歓声が巻き起こった。

 

「民よ!! 安心せよ!! 危機は去った!! そして私は新たな、更に偉大なる繁栄をここに約束しよう!! 新生セントラルドグマよ永遠なれ!!」



 そんな中、群衆の中に紛れてタタラとサンボは様子を見ていた。


「口からでまかせの大嘘吐きめ……」


 サンボが小声で吐き捨てる。 


「ああ……まだ狙いはハッキリ分からねえが、どうやらクソ野郎に間違いなさそうだな……」

 

「タタラさん……これからどうしますか……?」

 

「決まってんだろ? 囚われてるはずの王族を解放して革命返しだ……!! お前は志願兵を装って反乱軍に潜入しろ。王族の居場所と敵の戦力を探れ。うまくやれよ?」


「へい……!!」


 そう言ってサンボはにやりと笑うと、群衆の中に消えてしまった。

 

 タタラはもう一度アダムスの方をチラリと見上げる。

 

 その時ほんの一瞬だけ、タタラとアダムスの視線が交錯するのだった。

 

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