第14話 世直し


 高らかに宣言するアダムスに向かってニアレスト王は叫んだ。


「エリザが世界の母!? 建国だと!? 貴様一体何を企んでおるのだ!?」

 

「ククク……さすがは王様……知っておいでのようだ……かつてこのファンタジアを支配した伝説の古代国家の存在を!!」


 玉座に腰掛け足を組んだアダムスは部下からワイングラスを受取り、優雅にグラスの中の赤い液体を波打たせながら答えた。


「あれは伝説などではない……ファンタジアに君臨する王族たちの汚点だ!!」


 ギリギリと歯噛みしながら王が苦々しく呟く。


 それを見てアダムスはニヤリと口角を上げて言った。


「何を企んでいるかでしたね……? ですよ!! 絶対強者が下々の全てを支配する!! それこそがファンタジアの真の姿だ!!」

 

「何が世直しだ……!! まだ規模は小さいが、人々は善良な心と勤勉で安寧な暮らしを学びつつある!! 馬鹿なことはやめろ!!」

 

 しかし王の悲痛な叫びをアダムスは一蹴し部下に言った。

 

「連れて行け。地下牢に幽閉しろ」

 

 こうしてニアレスト王国は陥落し、アダムスと骸の骨スカル・アンド・ボーンズが率いるセントラルドグマが建国の狼煙を上げた。

 

 

 *

 

 

「何とか逃げ切ったな……」

 

「はい……麻酔弾がじわじわ効いて助かりました」

 

 王都の外れにある森林地帯でタタラ率いるタンタラス盗賊団はホッと胸を撫で下ろしていた。

 

 しかし目標が達成出来なかったタタラは顔を顰めて吐き捨てるように言った。

 

「クソ……だが王族の救出と反乱軍討伐が出来なかったのは痛かった……ニアレスト王は数少ない俺の理想に共感しうる人物だったってのに……」

 

「タタラ様の理想……?」

 

 しれっとちょこんと苔むした切り株に腰掛けたエルモアが、あどけない顔の上にクエスチョンマークを浮かべて首を傾げた。

 

 可愛い……

 

 じゃなかった……

 

 タタラは咳払いしてから自身の胸に親指を突き立てて言う。

 

「ああ!! 俺はこの世界の……ファンタジアの悪党を一人残らず捕まえる!! 人々の心に悪じゃなく正義の火を灯すんだ!! つまり……」

 


 

「世直しだ……!!」

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