第8話 クソを煮詰めたような
その日から俺は盗賊団を徹底的に教育し直した。
ついでにこの世界のことも色々聞いた。
ここファンタジアは控えめに言って、まあ……
クソを煮詰めたような世界だった……
貴族と王族は賄賂、裏切り、重税と、思いつく限りの悪行を尽くし、その悪辣さは現代社会でもひっくり返るヤバさだった……
しかも酷いことに悪事を隠そうともしない。
例えばこうだ。
*
「愚民どもよ。貴様らは税を上げればすぐに反抗する。そこで我々は考えた。今からこの遅効性呪詛ウイルスを散布する。助かりたければ解呪ワクチンを買いたまえ。なぁに……良心価格で提供しよう。値段は各自の財産の八割だ!! 八割の財産で命が助かる!! 素晴らしく良心的だろう?」
*
反吐が出るようなひどい話だ。
だけど酷いのは貴族や王族だけじゃない……
民衆もクソだった……
例えばこうだ……
*
「誰かぁああ……誰か助けて!! 泥棒よぉおお!!」
「ひひひ!! 見ろよ!? あの馬鹿金を盗まれたらしいぞ!?」
「鈍臭えババアだ!! 俺達も盗みに行こうぜ!!」
「や、やめてちょうだい……!! もう何も残ってないわ!?」
たまたまそれを見た俺は当然助けに入った。
「グラビトン……!!」
「ぐへぇえ……」
「大丈夫か? 泥棒もすでに捕まえた。もう盗られるんじゃないぞ?」
そう言って金の入った袋を渡し、俺がその場を去ろうとすると、女は信じられないことを
「お待ち!! ここにはたしかに銀貨が二〇〇枚入ってたんだ!! でも銅貨が二〇枚しか入ってないじゃないか!? あんたが盗んだんだろ!? さあ!! 差額の金貨三〇〇枚をさっさと出しな!!」
そのババ……女は弩弓を構えて意地の悪い笑みを浮かべていた……
教育水準も低く、どうやらまともな計算も出来ないらしい。
俺は愕然としながら呟いた。
「グラビトン……」
「ぷぎゃ…!?」
*
そういうわけで、俺は決めた。
この世界で盗賊として生きることを。
そして、この世界で正義を貫くことを……!!
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