第6話 あ、あなたは!?
一足飛びに城壁を駆け上がったベヒモスに反乱軍の視線が集まる。
紫の巨躯に無垢な瞳。
恋する乙女のように恥じらいながらタタラを見上げるベヒモスに、反乱軍の兵士たちは弓を向けた。
「何者だ!? ニアレストの援軍には見えんが……物見遊山なら即刻立ち去れい!!」
「貴様らに用はない。今退けば痛い目は見ずに済むぞ……」
タタラが戦場と化した城壁内を見渡しながらそう言うと、城壁の守備を任されたと思しき隊長格の男が剣を抜いた。
「怪しい奴……者共、一斉射撃!!」
「ベヒモス!!」
「バォオオオオオオオオオオ……!!」
タタラの声でベヒモスは力強く城壁を蹴った。
その瞬間、城壁が崩れ守備隊諸共瓦礫が地に落ちる。
近場の屋根に着地したベヒモスの横腹を撫でながらタタラは言った。
「いい娘だ。城に向かってくれ。そこに王族も立て籠もってるはずだ」
「バォオオオオオオオオオオ!!」
歓喜の雄叫びをあげてベヒモスが屋根を蹴る。
次々と家屋を踏み潰しながらベヒモスは城壁内の街を駆け抜けた。
その時、路地裏で戦う男たちと水色のローブに身を包んだ女の姿が目に留まる。
「ベヒモス待て!!」
その声でピタリと止まったベヒモスから飛び降りると、タタラは路地裏に舞い降りた。
それと時を同じくして、最後まで抵抗していた護衛の兵士が反乱軍に切り捨てられる。
「ふふふふ……さあ……一緒に来てもらいましょうか?」
「い、嫌!! 近寄らないで!!」
「手荒な真似はしたくないのですが、抵抗されたとあれば……ぐぴゅる!?」
反乱軍の一人が潰れたカエルのように地に伏せた。
仲間が慌てて振り向くと、そこには護衛軍とは明らかに毛色の違う漢が立っている。
「な、何者だ!?」
「俺の名は……」
タタラが口を開きかけたその時、ローブの女がフードを脱ぎ捨て大声で叫んだ。
「あ、あなたは!? ニアレストを騒がせる義賊!! タンタラス盗賊団頭領!! ”燻銀のタタラ”!? 身長173センチ、体重67キロ、流れるような漆黒の髪に、刀身の様な鈍色の瞳、悪党にそぐわぬ清潔さと教養を持ち合わせたダークヒーローにして、ニアレスト女子の憧れかつ、わたしのイチ推しがなぜこんなとろこに!?」
その瞬間、そこにいた誰もが思った。
なにコイツ……?
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