第3話 ファンタジア(悪党の巣窟)


「ぐへへへへへ……」

 

「ブアッハハハハハ」

 

 不愉快な笑い声が聞こえる。

 

「ふしゅるふしゅる……」

 

「うぃひゃひゅひょひょ……」

 

 気持ち悪いな……おい……

 

 いや……

 

 そんなことより……

 

 人の声!?

 

 永遠とも思える乳白色の世界を漂ってきた間、一度たりとも聞こえたことのない人の声……!!

 

 ヒューマンビーイング……!!

 

 がばりと起き上がると、そこは松明に照らされた洞窟の中だった。

 

 赤土の壁、毛皮の敷物、そして……

 

 周囲をぐるりと取り囲む、見るからに悪党面のアホそうな漢達……

 

 

 あ……終わった……

 


 三度目の死の気配に、タタラは涙を禁じ得ない。

 

 ホロリと悔し涙をこぼすタタラに、悪党面の一人が言った。

 

「目が覚めたんですかい!? お頭!!」


 ん?


 お頭?



「野郎ども!! ダルトンのお頭が目ぇ覚ましたぞ!!」


 ダルトン!?


 たしかアイツの名前も……


「よし!! 野郎ども!! お頭に精のつくもん持って来い!! 村に略奪かますぞぉおおおお!!」


「「応っ!!」」 

 

 洞窟に怒号が響き渡り、パラパラと小石が降ってくる。

 

 殺気立って出ていこうとする悪党どもに向かって、タタラは思わず声を上げた。

 

 

「待て!!」

 

 

 その声でピタリと漢達の動きが止まり、いっせいにタタラの方へと振り返った。

 

 

「どうしましたか!? お頭!!」

 

 

「お頭って言うな!! いや……そうじゃない!! お前ら何しようとしてる!?」

 

 まとめ役らしき漢が首を傾げておずおずと口を開いた。

 

「お頭が駄目なら……盗賊王すか……?」


「もってのほかだわ!! そんなことより、今から何するつもりだ!?」



「何って……お頭の快気祝いのために酒、肉、女を村までかっぱらいに行くに決まってるじゃないですか……?」

 


「人様のものを勝手に盗るんじゃねえぇええ!!」

 


「「えぇええええええええ!?」」

 



 こうして俺の捜査一課としての生活は二度目の幕を閉じ、盗賊の頭領としての新生活が幕を開けるのだった……

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