第2話 待て!! 俺は悪霊じゃない!!  


 ああ……

 

 身体があんなところに……

 

 あの出血量じゃ助からねえな……

 

 足元に横たわる自分の身体を眺めながらタタラは思った。

 

 でも後悔はない……

 

 女の子も無事だ……

 

 めっちゃコッチ見てるな……

 

 ああ……


 あの娘のお母さんが来た……

 

 良かった……

 

 あの娘もこれで安心するだろう……

 

 いや!! めっちゃコッチ見てるな!?

 

 少女は俺の死体の上を指差し静かに言った。

 

「おばけ」

 

 その瞬間母親がこちらを見て怪訝な顔をする。

 

 首を傾げて少女に向き直ると頭をなでながら呟いた。

 

「よっぽど怖かったのね……何にもいないわ。もう大丈夫よ?」

 

「でも浮いてるよ? 見てて」

 

 そう言って少女は地面に落ちた枝を拾い上げ、俺目掛けて枝を振る。

 

 バチン……!!

 

 その瞬間激しい痛みが俺の頬を襲った。

 

 痛い!?

 

 え? めっちゃ痛い!?

 

 なんならさっきの銃弾より痛い!?

 

「あっち行け!! この悪霊!!」

 

 待て待て!! 俺は悪霊なんかじゃ……

 

 ひぃ!?

 

 少女は人差し指と中指を唇に当てて何かをつぶやき始めた。

 

 その瞬間俺の魂が悲鳴をあげる。

 

 あれは喰らったら絶対マズイ何かだ……!!



 しかし身じろぎ一つできない今の俺にはどうすることも出来なかった。

 


「おーん……!!」

 

 少女が叫ぶと同時に、俺の魂は散り散りになって吹き飛ばされる。

 

 マジか……

 

 マジなのか……

 

 助けた少女に二度目の死をお見舞いされるとは……

 

 夢……にも……

 

 思わな……か……った……よ……

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