帰納法
若い頃マイカーを持つようになると北海道中をドライブして廻るようになる。
何台か車を乗り換え大体北海道内のすべての土地をドライブした。
この車での旅で思いがけない感銘を受けたことがある。
田舎町と言うのはその町に入ってくる主要な道路が少ない。
中には国道に寄り添うようにして現れ、走り去ると消える小さな町もある。
そんな小さな町は2次元的平方の価値観をあまり持っていない。
いわば道に連なる家屋の集合体でしかないのだ。
北の先端にあるのは稚内市だ。
野寒布岬(ノシャップみさき)も宗谷岬も稚内市にあるが、市街地は野寒布岬の方にある。
どちらの岬も観光客は集まるが、何故か野寒布岬へ集まる人の方が多いように思う。
日本の最北端は宗谷岬だが、この周辺は閑散とした土地に観光客用の小さいホテル何軒かと漁業を営む小さな集落で形成されている。
稚内市の市街地に入るルートは4つある。
国道40号線を南方から真北へ向かって入るルート。
JR宗谷本線で国道40号線とは西にぶれながら南から入るルート。
国道238号線を使って宗谷岬方面より東から入るルート。
天塩町から道道106号線を使って日本海と利尻島を望みながら入るルートだ。
俺は鉄道を利用してこの町に入ってことがないので、実体験上は上述の3つのルートを経験している。
この3つの全く異なる景色を見ながら町に入っていく風景が1つにまとまる時の感銘は忘れられない。
道道106号線を使う場合、市街地に入るところを左折して宗谷サンセットロードを行くと稚内市街地を通らず野寒布岬へ至る。
ここは閑散とした漁村的な住宅街だが好きな道だ。
大体は市街地を通っての野寒布岬へと至る途中の道道106号線の港付近やJR駅があるあたりを通る道に来ると稚内に来たと言う感慨にひたることが出来る。
この道道106号線からそのまま254号線へとわからずに切り替わる道から岬に至るいつもの通りだ。
稚内の市街地と岬までが途切れることなく続く街並みがみられるため、ついこのルートで岬まで出て岬の無料の観光駐車場に車を乗り入れトイレなどを利用したりする。
こんな風に実体験をもって地図を証明出来ると言う旅ができるのも、この辺くらいではないだろうか。
それは広い大地や自然の風景を含む海岸線を目で時々追いながらものだ。
日頃生活するのでない土地ではなおのこと不思議さと感銘を受けるのだろう。
地図で証明出来るものを自分が現地へ行って体感として得られる感覚は全く別のものだと言えるだろう。
帰納法に近い言葉になるが、地図を証明するためにドライブすると言うのはちょっと帰納法とは違う気もする。
地図が正確であると信用するところにこの旅の理由があるからがその理由だ。
この他にも帯広の町を東西南北4方向から入ると言うことも同じことが出来る。
今ではこの町にも道央(北海道中央部、札幌など)から高速道路が繋がっているが、昔は国道38号線を使って西から入って行くルートが個人的に主要なものだった。
車を持つようになってこのルート以外の3方向からの帯広市入りを体験している。
東の果ての根室市はこの点で考えると面白い。
ルートは2つあるがどちらも西から入るだけになる。
国道44号線と道道142号線北太平洋シーサイドラインの2つで、釧路─根室間の営業車の殺伐とした国道のルートは好きではない。
観光で通るなら道道が絶対に良い。ただし、この道沿いには店舗らしきものは殆ど見当たらないが。(浜中町霧多布の市街地へ入り込む必要があるほかガソリンスタンドはある)
この根室市に入る時夜だと町の夜景が地平線に忽然と現れる様は異郷の地にさまよっているかのよう。
市街地から納沙布岬(ノサップみさき)までは遠く、寒々とした海の風景は好き嫌いが分かれるだろう。
この岬にある夏訪れたことがあるが、一桁の気温の寒さに啞然としたことがある。
今では温暖化で根室だと信じられない太陽光線が身体をさす。
こんな旅情もグーグルのストリートビューとかで確認できるようにはなったが、自分で現地へ行って体感として経験すると言うのも良い事かも知れない。
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