第3話

灯りがないと人は生活できない。今を生きている人間は電気という文明が根付いてしまっているため、皆がそう口にする。確かに災害などで電気が通らなくなれば人々はかなり苦労した記録が残る。

けれど彼女は、その灯りをよく思っていなかった。

「どうして夜になればなるほど灯りが増えていくの?今は夜で、夜は朝のためにあるの。こんなに夜が明るくなってしまえば、朝が来たことがわからないじゃない。」

やはり窓の外をみている彼女は口をとがらせていた。

「そうだね。でも、それなら朝が来たとき、ちゃんと君に教えるよ。」

彼女が安心できるように。


学とは何だろう。頭の良し悪しは何を基準に決めるのだろうか。

テスト、日常会話、文章。

測り方は多くあるが、彼女はどれを選んでもお世辞にも頭がいいとは言えなかった。

47都道府県は言えないし、分数の足し算もできなかった。

きっと彼女の脳内はそんなことよりもっと別のことでいっぱいなんだろうと思った。

学歴社会だと学も歴もない者たちが騒ぐこの世界で、彼女は一人だけだった。

「私の中には勉強とか常識とか、そんなものよりももっと重要なものがあるの。だけれどその重要は私の中での重要で、あなた達の中では重要ではないかもしれないから、きっと理解はしてもらえない」


彼女の学などどうでも良かった。それより彼女の中の重要なものを壊したくなかったし、いつかそれが皆の重要になり得ればいいと願っていた。


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