第11話 二人の友人


 人を比べるのは意味のない行為だと思う。

 三上と広之は全く違うタイプの人間だ。生まれも育ちも見た目も性格も、やっていたスポーツも、何一つ重なるようなことが見当たらない。

 背が高いことは共通しているけど、相当遠くにいても判別するのは容易いと思う。

 ここまで共通点がないのはむしろ驚くべきかもしれない。でも俺はこのまま三上と友達になれると思う。親友になれるかは、俺一人で決めることじゃないから分からない。

 気の合う人間がこの世にほんの数人しかいないとは思わない。きっと一生行くことのない場所にも仲良くなれる人間がいるはずだ。

 それに人は変わっていく。

 今の俺は高校時代の自分とは違う。ポジティブな変化なら良かったけど、残念ながら自分に自信がない人間になった。高校生の頃はもっと訳もなく自分に満足していた。今は我ながら少し輪郭がぼやけている。

 大学生になって、自分のあり様と未来にちょっとショックを受けたせいだ。そしてそれ以上のショックを広之が与えてくれたお陰で、俺は去年の自分とも確実に違う人間だった。

 今の俺は現実世界に居続けることもままならない。死にたいほどの絶望状態じゃない。ただ、勝手に心が内側に閉じ籠ってしまう。




 大学二年になったある時から、俺のあんまり気の合わない二人の友人が、急に俺を構うようになった。

 あんまり気が合わないと感じている癖にそこから立ち去らない俺も俺だけど、ちょっとだけ面倒くさい。

 以前は「一緒に行かない?」程度だった誘いが、「行こう」に変わり、外部のセミナーや、俺が行く地域ボランティア以外の活動にも連れ出され、少し前には俺に興味が持てそうな資格が無いかと熱心に聞いてきて(二人はいつの間にかそういう系のサークルにも所属していた)、ついには新しくできた水族館にまで誘われた。

 二人の唐突な変化にはもちろん首を傾げたものの、近い将来、俺は社会の一員となるわけで、そこでそこそこ安定した収入を得るためには、あと数年間はそれなりに必死にならなければいけない。

 正直そのことについてきちんと考え始めると不安に押し潰されてしまいそうな気がしていて、だから俺は素直に二人の言うとおりにした。

 俺はいよいよ流されることを受け入れた。

 社会に出る前に下らないプライドが消えて良かったと思う。

 自分が変わって行くのは、どこか寂しくて、どこかホッとする。

 寂しいのは自己意識が薄れてぶり返した思春期の終わりを感じるからか、それとも三上が言うところの、俺の観測者だった親友がいなくなってしまったせいかな。

 ホッとするのはクライシスを抜けたせいだろう。そう思いたい。


 死んでしまった親友を置いて、俺だけが変わっていく。

 内側に意識を飛ばすとき、俺はいつも本棚の向こうに隠した『広之の部屋だった空間』と向かい合っている。

 自分の頭に中にある、親友のために空けておいたストレージを見つめている。

 けれど、どれだけ長く閉じ籠って広之について思考を続けても、いつまでもそこは空っぽなままだ。なぜならそこは、広之に共有してもらった情報を置いておくための場所だから。広之に起こった出来事や広之が語った話なんかを置くために開けておいた場所だからだ。

 この先一生をかけて膨大な記憶が増えていくだろうと思っていた場所が必要が無くなってしまった。

 これをどうするか、俺はそれと向き合ってる。

 

 


 金曜日に田中のテーピングを巻きに来ると、いつもいる三上がいなかった。

 俺はお守り代わりのテーピングを巻きながら、三上のいない理由を田中に聞こうか迷ったけど、今、俺の隣には二人の友人の連れがいて、そのことを説明するのもなんだか面倒な気がして黙って巻いた。



 田中と別れた後、俺は二人に連れられて、名目のはっきりしない船上パーティーに参加していた。

 貸衣装まで着せられて、どこを見渡してもラグシュアリーな空間。庶民の俺の全身には緊張が走った。

 俺は二人の意識の高さがついに宇宙にまで突き抜けたんじゃないかと疑いながら、恐々二人の後ろに付いて歩いた。

 そこにいたのは二人のような『意識の高い大学生』ではなく、完全な大人だった。それもいわゆる成功者の。

 俺にすら良いものだと分かるスーツ。頭髪も海風に乱されないほどカッチリとセットされている。一見カジュアルな装いの人もいるが、身に付けた腕時計やアクセサリーや靴が、俺を恐ろしい気持ちにさせ、庶民を寄せ付けない魔除けのような効力を発揮している。

 フォーマルなジャケットをオシャレに着崩したDJまでいて、雰囲気のいい音楽を回している。

 いったい二人にどんなツテがあってこんなところに俺まで潜り込ませることができたんだろう。

 圧倒的な場違い感に俺がまごついている間に、二人は知り合いを見つけて俺をその男性に紹介した。俺は頭が真っ白になりながら、爪が綺麗に磨かれた年齢不詳の男性から名刺を受け取った。

 なんてところに連れて来てくれたんだよ。

 俺は二人がその人の話に熱心に相槌を打つのを背筋を伸ばして聞きながら、しまうタイミングを失した名刺が手の熱でへろへろになってしまわないようにふちを持って、早く帰りたいと心の内で叫びまくった。

 いっそ自動運転になってしまいたかったが、あれはそんなに都合よく起こってはくれない。

 ただ、不安をよそに会話は丁度いい長さで終わり、その人はウエイターを呼んで俺たちにシャンパングラスを持たせると、また別の高そうな服を着た男性を呼び、俺たちをその人に紹介してさっさとどこかへ行ってしまった。

 俺たちを任されたその人は、にこやかに笑って名刺をくれた後、またいくつかの自己紹介を交えて、丁度いいトークをで俺たちを接待し、また別の知り合いを紹介してどこかへと去っていった。

 そんな調子で、受け取った名刺を確認する間もなく紹介リレーが続き、気がつくと貰った名刺で手裏剣遊びができそうなくらいにポケットが重たくなっていた。


 リレーは突然の相手の着電で終わった。

「疲れた?」と俺を気遣う二人に「大丈夫だよ」と笑顔で首を振った。

 相手をしていたのはほとんど二人だし、時々俺にも話を振ってくる人はいたけど、明らかに場慣れしていない俺を敏感に察知した大人たちは、俺をきちんとそれなりに扱って去っていった。

 高校時代は大人と話すなんて、なんてことなかったのに。まあ庶民の大人ばかりだったけど。

 あの頃の無敵感を失って、これからはどうやって自信を維持すればいいんだろう。俺は真面目に分からなかった。

 溜息が出そうな俺とは違い、この二人の友人は着実にこの世界の住人に近付いている。

 あれだけの意識の高さがあれば当然か。

 また少し気が滅入る。なんで二人はこんなところに俺を連れてきたんだろう。今夜は陸からも離されて、ひどく心許ない。

 結局電話に出た男性は帰っては来なくて、三人で大人に紛れて船上を彷徨った。

 時折酒の入ったギラついた眼の人とエンカウントして、その人が語るカタカナが多すぎてもはや日本語ではないような言語を三人でにこにこと聞いて、シャンパンとつまみをぱくぱくと食べた。

 俺の口は居心地の悪さで乾き切っていたけど、シャンパンは美味しかったし、小洒落たつまみも抜群に美味しかった。


 すっかり夜になり、七時頃動き出した船は、二時間経っても遠くへ行くわけではなく、街のネオンは変わらずすぐそこで輝いていた。きっと負けないくらい船も輝いている。人も、シャンパングラスも。俺以外は。

 大人のパーティーに潜り込んだ高校生の気分だった。残念ながらわくわくはしない。自分の存在が雰囲気にかき消されているのが分かる。酔った俺が今海に落ちても、きっと誰も気が付かないでパーティーは夜更けまで続くんだろう。

 グラスを三杯空けて、ふわふわと熱を持つ身体を時々二人にぶつけながら、与えられたクランベリーの一口パイの美味しさに眉を顰めた。



「あの人たちの言ってる意味わかった?」

 唐突に二人の友人の一人である南が口を開いた。

「全然分かんなかった」

 ゆるゆると首を振ると、南は「俺も分かんなかった」と笑った。

「え、そうなの?」

 驚いた俺に、反対隣にいた綾部が、「そうだよ、全然意味わかんないよ」と噴き出した。

 俺は二人を交互に見て、「じゃあなんで来たの?」と、少し憤りを隠せずに聞くと、顔色ひとつ変えずに何杯目かのシャンパンを煽った南がウエイターにグラスを返し、「変だなあって思うためだよ」と肩を竦めた。

「どういうこと?」

 完全に首を傾げた俺を、二人は空いたソファーに連れて行って座らせた。二人も俺を挟んでソファーに腰を下ろす。

 ここ最近ずっと二人は俺を真ん中に置く。なぜかは分からない。逃がさないよと言われてる気がして、少し不快な心地がする。

 俺は黙って二人の顔を何度か往復した。

「普段俺たちは、一生懸命何かになろうともがいてる。時間を無駄にせず、暇のある学生時代に少しでも将来の役に立ちそうなことをして」

 唐突に話し始めて唐突に途切れた南の言葉を綾部が引き取る。

「そんなふうにしてるとさ、時々ひどくやってられない気持ちになる」

「なぜ?」

 綾部は眉を上げた。簡単だよ、というふうに。

「ギャンブルをしてる気がするんだ。自分の時間をベットして、それに見合う人生が来るって信じてさ」

「勝率はそんなによくない気がしてる」

 南がまた肩を竦める。外人みたいに。

「こういうパーティーってさ、一見、余裕綽々の成功者たちばかりに見えるけど、前に見た人が居なくなって、知らない人が前からいましたみたいな顔でそこに居るんだって」

「でも誰もそれを表には出さない。去るものは惜しまず、新顔は笑顔で迎える」

「この人たちもまだギャンブルの最中なんだって思った。きっと、これからもずっと」

 俺はまた二人の顔を交互に眺めながら、アルコールでもたつく脳をなんとか働かせようと海風を吸い込んだ。

「俺たちは成功者になりたいわけじゃない」

「え?」

 思わず声が漏れていた。二人はそんな俺を優しく笑った。

「俺たちが成功者を目指してると思ってた?」

 違うの? 恐る恐る頷く。二人はクスクスと笑う。

「早く安心したいだけだよ。あんなギラついてないと食われちゃいそうな群れには混ざりたくない」

 そうなの? そうだったのか。でもそうすると、じゃあここに俺を連れてきた意味はなんなんだろう。

 綾部がふーっと息を吐いてソファーに寄りかかった。

「こうして眺めてるとさ、みんな同じに見えてこない?」

 綾部の問いを南が引き取る。

「なんか、逆さまになって泳ぐヘコアユの群れみたいだ。みんな同じに変わってる」

 俺はこの間二人に連れていかれた水族館で見たヘコアユの大きな水槽を思い浮かべた。

 スポットライトを当てられて、ひと抱えの木の葉を巻いたみたいな群れが揺れていた。

 よく見ないと逆さまになっていることにも気が付かない。魚だってことも、初見なら気が付かないかもしれない。

 ゆっくり、ひらひら。

「あの人たちの発言の全ては分からない。ばかばかしくも感じるしさ。でもあの人たちには需要があって、人を惹きつける力があって、経済を回してる」

「ヘコアユと同じだ」

 俺が言うと二人は笑った。外人みたいなオーバーリアクション気味に。

「──だから、不安だよ」

 その言葉をどちらが言ったのか分からなかった。

 二人は同じ顔で俺を両側から微笑んで見ている。

「そうなの?」

 二人はゆっくり頷く。

「いつまでも終わりはないんだなって」

 それは俺が感じていた恐怖だ。漫然と、でも確かに移ろっていく世界。そこで自分もなんとか掴まっていられそうな場所を探して、その小さいスペースを必死に守りながら生きていかなくちゃならないんだろうって思っていた。怖かったけど、頬の怪我に唇を寄せても笑っていてくれる親友がいるから大丈夫だって思っていた。目を合わせるだけで、それだけで何もかもが通じ合えるような相手がいたから。

 いなくなってしまったけど。

 また飛んでいきそうになった俺の手を、二人の手が握った。

「俺たちも、将来どうなりたいかはよくわかってないんだ」

「そうなの?」

 二人は頷く。

「大人だってこうしてパーティーを開く。コネクションを作って、自分の存在を示し続けるために。まだ取るに足らない学生の俺たちにまで自分を示す」

「なぜかな」

「俺たちが、一応未来だから」

「未来」

「俺らのうちの誰かが将来彼らになってるかもしれないからね」

「俺たちはなれるとも思ってないし、なるつもりも無いんだけどさ」

 南が笑って、綾部も笑った。

「わかってないまま、大人になっていくんだろうね」

「大人もきっとそうなんだよ。未来に関して言えばさ」

「怖いよね」

 触れ合った二人の肩が、自分と同じようにペラペラに思えた。たくさんの行き交う大人達も、みんなペラペラのヘコアユだ。

 今二人は弱音を吐いている。俺を真ん中に座らせて。

 ずっとそんなもの無いみたいに見えていた。でも二人には分かっていたんだ。自分たちの中にある不安が俺の中にもあるって。こんなところで大人たちを眺める度胸と行動力のある二人には。

「うん、俺も怖い」




 二時間半で船は陸に戻ってきた。この後は別会場に移るらしい。

「二人は行かないの?」

「行かないよ。疲れたしさ」

 二人に挟まれて貸衣装屋に向かいながら、どのつまみが美味しかったかで盛り上がった。三人の意見は合わなかったけど、どれも美味しかったでまとまった。


「二人も将来を不安に思ってたんだ」

 服を着替えながら、今日の一番の驚きを打ち明けた。

「悩みが無いように見えてたの?」南がケラケラ笑った。

「うん。だって愚痴とか言わないし」

「言わないだけで、ないわけじゃない」

 綾部が目を細めて俺を見た。それからちらっと南に視線を送る。

 ああそうか、そういうことか。そういうことなら俺にも分かる。

「そうだよね」

 二人は親友だ。見つめ合えば会話なんて必要ない。


「友也」

 すっかり着替えが終わって、綾部が俺の肩に手を乗せた。

「うん?」

 前に立つ二人が、いつものちょっと世話焼きな目の色で俺を見ている。

「俺たちがいるから、少しずつでも元気になるんだよ」

「俺たちはさ、俺と南は、自分たちがいいと思う事しかできない。だから、これからも友也を変な場所に連れて行くよ」

「変な場所?」

 俺は笑った。

「嫌なら早く元気にならないとね」

「友也が嫌でも俺は連れて行くよ」

 南は断言した。

 俺はまた笑った。ちゃんと嬉しくて笑った。

 二人は去年の九月から、俺を両親と同じようにずっとそっとしておいてくれた。それで、親よりもずっと現実的に未来への不安も感じている二人は、そろそろ俺を立ち上がらせてやらなきゃって思ったんだろう。

 俺は気が合わないと思いながら、二人の気遣いに居心地の良さを感じて甘えていた。だって二人は広之を知っている。俺のそばで二人だけが、俺が親友を亡くしたと知っている。

 三上が言う所の『記憶』が二人にはあった。

「本当に辛い出来事だったよね」

「うん」

 しくしくと泣き出した俺を、二人が両側から抱きしめた。

 やってきた貸衣装屋のスタッフは、何も言わずに俺たちの衣装を片付けていった。




 店を出ると、そこに三上が居た。

「なんで?」

 俺がとぼけた声を上げると、三人は声を上げて笑った。

「今日のパーティーは三上のツテで入ったんだ」

 南が告白した。

「三上のツテ」

「少しは気分転換になるかなーと思ってさ」

 綾部の言葉に頷きながら、三上が自分の実家はお金持ちだと言っていたのを思い出した。

「そ、俺は金持ちの三男坊だからね」

 三上は笑って、ポカンとしたままの俺のほっぺたをむにむにと摘んだ。

「あれ? 泣いた?」

 三上が俺の顔を覗き込む。

「ちょっと……二人に泣かされて」

「え? ケンカ?」

 驚く三上に、二人もびっくりした声を上げた。

 俺だけが笑って、「二人が優しくするから泣けちゃって」と返すと、三上がよく分からない顔で「そうなんだ」と、ひとつ深く頷いた。やっぱり何も聞かないらしい。


 南がついと三上に近付いた。三上も気が付いて南を見た。

「途中から現れた君に友也を任せるのは友達としては歯痒いんだ」

 何を言い出すんだと俺は南に集中した。すると綾部も三上に近寄って。

「そうだよ。でも君が友也のことを気にしてくれているのはよくわかった」

「ど、どうしたの二人とも」

 俺は二人の妙な口ぶりに、慌てて間に割って入った。

「友也」

「は、はい」

 二人が三上から俺に体を向ける。

「夏休みに旅行に行こう」

「は?」

「場所の候補は色々あるけど、あとで三人で決めようね」

「う、うん」

 俺は完全に意味が分からないまま了承した。

 やっぱり二人の思考パターンは俺には理解不能だ。一体どうしてこのタイミングで夏休みに旅行に行こうという話に到達するんだ。さっぱりわからない。

 俺が首を傾げていると、綾部がチラと三上を見て目を細めた。「まあ三上も来たいなら来てもいいけど」

 おいおいなんでそんな上から目線なんだよ!!

 俺はぎょっとして、心臓がドキッと鳴った。

 二人がなぜ三上に刺々しいのか分からない。折り合いが悪いのか? と恐々三上の表情を確認したが、三上はいつも通りの人好きのする笑顔だ。

「いいね旅行! 全国に何か所か別邸があるし、押さえてるホテルもあるから、是非候補に入れてよ!」

 なんて朗らかな金持ち発言。

 ぎょっとする俺の横で、南も綾部も言葉を失ってしまっている。

 三上の家は船上パーティーに大学生を送り込めるほどのお金持ちなんだろう。でも三上は明らかにさっき船にいた大人たちとは違った。

 生まれながらの金持ちのオーラが流星群のように遠慮なくペラペラな俺たちに突き刺さった。

「友也、こいつ本当にいい奴なんだよね?」

 南が俺に耳打ちする。

「う、うん、そう思うよ」

 俺は傾げた頭を縦に振る。

「俺、やっぱり成功者になる!」

 綾部が見たこともない邪悪な顔で歯を食いしばった。

 


 二人はなぜか俺を三上に預け、手を振って帰って行った。

 俺はホーッと息を吐いて、今日一日の色んな感情の凹凸をなだらかにした。

「疲れたの?」

 三上を見上げて頷く。

「庶民には馴染みのない場所だからね」

「料理は美味しかっただろ?」

「うん、すごく。でもあんまり食べた気がしなかった」

 言った途端、お腹がぐーっと鳴って、二人で声を上げて笑った。

「ラーメンでも食べる?」

「いいね、食べたい」

 やっぱり三上とは気が合う。そばにいると楽な心地がする。

 でも、あの二人との旅行も今は楽しみだと思える。

 これからも、俺が足を向けないような場所を二人は教えてくれるんだろう。俺を元気にしたいという気持ちから。

 優しい二人の友人を大切にしよう。

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