第二十三幕『その水を汲み入れるのをやめろ!-It’s no use crying over spilt milk-』
夏雲が立ち上がり、気持ちの良い風の吹く空の下、小さな船が海を
船はエンジンが止まっており、完全に止まっている。しかし事故やアクシデントでエンジンが止まってしまったと言う訳では無く、ただ単に乗員が
船の甲板で昼寝をしているのは一見
すっかり周囲が暗くなってしまったのだが、
木造船は小さな船に近づき、そしてそれこそ船から船へと飛び乗れそうな
しかしこの古ぼけた木造船、船首は朽ちかけており、船体はどこもかしこも
そして何より、何より目を引くのは木造船の
「体が
「水を浴びなくては……」
「
船員達の体は強烈な熱波を
船員達の声は外見とは
「………………」
筋肉質な青年は
「おお、ありがたい……」
「これで海水を
「これで願いが叶う……」
木造船の船員達はそう言い、コップを手に、船から垂れ下がって海水をコップに入れ、そして笑みを浮かべた。
「「「これで仲間を増やせる……」」」
次の
誰も彼も海水が入ったコップや
「「「お前も仲間になれ!」」」
木造船の船員達はコップやジョッキや柄杓やお玉で、その小さな船に海水を投じ始めた。
この木造船は一種の
このままでは船が沈んでしまう! しかし筋肉質な青年は慌てず騒がず、
「「「え?」」」
木造船の船員達は文字通り、顔面に水を打ち付けられたかのような反応。パニックに
「「「ええい、相手は一人だ! 全力で沈めろ!」」」
船員達は
木造船の船員達は必死になって海水を相手の船に投じたが、それを
「い、いかん。このままでは船が沈む!」
木造船の船員の一人がそう気が付いたが、しかし必死になって海から海水を掬っては相手の船に投げ入れる作業に没頭している船員達の大半はそんな事に気が付いていない。
助かりたいならば、自分の船が沈まないよう海水を自分たちの船から掻き出さなければならない! しかし、そんな行為が
最早自分達は船を沈めるために海水を投じるのではなく、自分達が船を沈められないために抵抗をしなければならない。それも、目の前でバケツを振り回す青年たった一人に!
「水を汲み入れるのをやめろ! このままだと、船が沈むぞ!」
その船員はそう叫んだが悲しいかな、木造船の船員の誰もがその言葉が自分達を止める言葉だとは気付かなかった。そして……
* * *
この地域には古くから
この地域では昔から海難事故で船が沈む事が多く、そう言い伝えられていたのだが、しかしある時を境に船が沈む事故がめっきり無くなった。
人々はやれ、成仏出来ない幽霊を
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