第4話 行動

父は父で驚き呆れて口をあんぐり開け、母は母であまりの告白に目を白くして失神してしまった。しばらくして父は – どこに隠していたのか、安い女の血で出来たワインのボトルを握りしめ、こう言い放った。


「評議会の、連邦の、いや、父さんたちの伝統を蔑ろにするつもりかっ!」


家族に私達の恋愛関係が露見したのは数週間前だった。私は1958歳、「彼」は、仮に彼が私と同世代であるならば、二つ年下の27歳の男性である。肉体関係は無論ない。ヴァンパイアにとって、繁殖行為に類する行いなどは血液を接種することに比べれば雲泥の差があるからだ。ちなみに、キスのキの字すらない状態だ。純粋な異性交遊といっていいだろう。少なくとも…今のところは。


 彼の住む一軒家を前にして、私はため息をひとつついた。決行は今夜と決めている。血清も打たずになってから数年経つ。放っておけばこの身は文字通り灰となってしまうのだ。「彼」にライソを送る。


「家だと恥ずかしいから、外で会えないかな?」


しばらく返事を待つ。数秒経つか経たないか、


「いいよ」


望外の返事だった。だが私は嬉しさよりも罪悪感で満たされる心が憎たらしくて仕方がない。

 見ていると、ドアを少し開け、左右を確認しながら「彼」が手招きした。


「こっちこっち。どうしたの?」

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