第82話 悩み多き皇帝

 いろいろと一段落して、皇帝が僕の領地に来た。

 星型要塞とかバリスタとかを見学。

 自慢の製品を一通り。


「なあ、ロレンツォ。ちょっと、聞きたいことがある」


「なんでしょうか」


「オレはこの大陸の東半分を統べる帝国の皇帝だ」


「はい」


「有能だし、まだ若い」


「若い?」


「オレはまだ28だ」


 皇帝は僕をじろりと睨む。


「おまえはなぜそこで疑問を浮かべるのだ?」


「皇帝があまりにも貫禄がおありになるので」


「よい。なあ、オレは疑問がある。女性はオレを見てどう思うだろうか」


「皇帝に対して、ということであれば、何も問題にならないと思いますが」


「どうだ、お前の周囲でのオレに対する評価は」


 僕はピンときた。皇帝はセリアかマリアを気に入ったようだ。


「閣下、もし聖女マリアのことをいうのでしたら、彼女はどの男性にも興味がありません。私の妹のことをいうのでしたら、怖れながら、おそらく閣下には肯定的な評価をしているかと」


「ほう。何故に」


「私の妹は男らしい男性を好みます。おそらく、閣下は妹の好ましいと思う男性像に合致しているかと」


「それは、内面的なことか。それとも、外見的なことか」


「両方です」


 皇帝は、若ハゲにずっと悩んできた。何しろ、20歳を越えたあたりから頭髪が後退し始めたのだ。 25歳では見事なフランシスコ・ザビエルとなった。悩んだ皇帝は頭髪を剃ってしまったのだ。


 対して、セリアはハゲ専というわけではないが、ハゲが大好きだった。カワイイらしい。



 こうしてセリアと皇帝との仲は恙無く進展した。セリアも15歳を過ぎており、この世界では結婚適齢期だ。晴れて、婚約することになったのである。



 結婚式の日。


「なあ、ロレンツォ。王女さまだけずるい」


 このところ出番のなかった聖女様が久しぶりに現れた。


「きみ、基本的に男とか結婚とか好きじゃないよね?」


「好きちゃうけど、ウェディングドレスは着てみたい」


「君さ、中身はともかくめちゃくちゃ美人でしょ?」


「あほか。中身もイケてるわ」


「冗談は置いといて、ボネース教会とかどう?セリアのウェディングドレスも控えめに見えるようなドレス、作ってくれるかもよ」


「せやろか。ちょっと行ってみよか」


 マリアは早速教会に顔を出してみることにした。


 教会では驚きとともに大歓迎を受けた。マリアの名は王国のみならず、広範囲の教会にも轟いていた。ただ、マリアは行方不明とされていたので、多くが驚いたのだ。



「しもた。忘れていたわ。うざい男どもが大挙してやってきたわ。もう領地からでんとこ」


 何だったのかわからないが、マリアは猫になって日向ぼっこする時間が長くなった。ウェディングドレスは頭から消え去ったらしい。



 なお、ランベルトとフィナも結婚することになった。実はもう5年以上前からつきあっていたらしい。まあ、自然な成り行きか。


 僕はセリアたちに劣らないような豪勢な結婚式にした。少なくとも、宝石とか衣装、食事は同等のものにした。



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