第79話 ツォン帝国2

「ソージン、気が狂ったか」


「……あなたたちに勝ち目はありません。降伏しなさい……」


「いつものソージンじゃないですね。目が虚ろで、精神をコントロールされているようです。ここは牢屋にいれて頭をひやさせましょう」


 ツァン遊撃隊に戻ってきたソージンは、ロレンツォに言われた通りに降伏を勧告して、牢屋にぶち込まれた。ソージンは遊撃隊でも有数の戦士である。かなり暴れたが、十人がかりで押さえつけた。


「敵は外におるのか」


「ええ、正門の外300mぐらいのところです」


「どうやら、敵は長距離攻撃が得意のようじゃの」


「はい、最初にやられた部隊の生き残りの証言では」


「よし。一個中隊で敵に弓の一斉射撃を食らわすぞ。敵を殲滅せよ」


 ワラワラと出てきたツァン族の兵士たち。

 160名ほどいる。


「弓構え。敵は300m前方。撃て!」



 その光景を見ていたロレンツォは、


「アルベルト、やっぱり降伏しなかった」


「まあ、当然ですな」


「弓、一斉射撃してきたけど」


「撃ち落としますか」


 ロレンツォは風魔法を起動した。

 弓矢はあっという間に吹き飛ばされた。


「なんだと。再度装填、斉射。続けて各自自由に弓を撃て。それから、一個中隊を持って迎撃の用意。弓の攻撃が終わったら出るぞ!」


 何度か弓が飛んできたが、そのたびに弓矢を吹き飛ばしていくロレンツォ。もっとも、結界・防御魔法がかかっているので、心配はいらない。



「あー、騎馬隊が出てきましたな。中隊規模ですね。指揮官を攻撃しますね」


 ランベルトは魔導銃を構えると、連続して発射した。見事に中隊長以下指揮官とおぼしき兵士数人の額をとらえた。それでもつっこんでくる騎馬兵。

 

「なかなか鍛え上げられていますな。指揮官なしでも個々の判断力が衰えません」


「うん。じゃあ、土魔法」


 ロレンツォは敵の進路方向に塹壕を瞬時に掘り上げた。塹壕にはまる馬たち。


「騎兵に告ぐ。降伏せよ。さもなければ指揮官のように額に穴があくぞ」


 構わずに、塹壕から這い上がってこちらに向かってくる。見上げた闘争心だ。ロレンツォは魔法火球で彼らを倒していく。


 中隊は半壊した。塹壕で重症を負ったものは、馬を含めてマリアが治療していく。


「何、あっという間に骨折がなおったぞ」


「オレもちぎれた腕が生えてきた」


「やっぱりこいつら、鬼神だ」


 一斉に地に伏すツァン兵士。正門近くでこの光景に唖然としていた兵士たちも彼らに続く。



「言っとくけど、突然攻撃してきたのはそっち。僕らは旅行してただけだから」


「後ろがない状態で攻撃されたら、敵の殲滅は常道。わかりますよね?」


「だいたい、攻撃するのなら、こういう攻撃をするよ」


 ロレンツォは空に向かって核激魔法を放った。

 轟音とともに盛大に地面が揺れる。


「ひぃぃ」


 なんだか、以前同じ様な光景をみたぞ、とロレンツォは思いつつ、ついでに遠くの地面にも激烈な魔法を。


 詠唱するまもなく、ロレンツォの手から放たれた赤い火球は、遠くに着弾すると数百mもの高さに及ぶ爆炎を吹き上げ、後には半径100mを越える大きな穴ができた。遅れてこちらにも爆風が到達する。


 腰を抜かす、ツァン族兵士。ロレンツォも以前よりも威力が増していることに気を良くしている。



―――――――――――――――――――――――

ブックマーク、ポイント大変ありがとうございます。


励みになりますm(_ _)m


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る