第46話 村の特産品の開発 砂糖
甜菜(てんさい)は試しに植えてみると、問題なく成長した。しかし、砂糖分が少ない。大量の甜菜から僅かな砂糖しか生産できないのを見て生産をためらう。
ただ、混合農業では甜菜は有益なんだよな。
根菜類は土壌を深く耕す役割があり、土壌を改善する。飼料にもなるし。
甜菜からも砂糖をとることにして、メインはサトウキビ砂糖にした。
この国にはサトウキビが生えている。
製糖業者が砂糖を絞っているが、質が低い。
僕は、サトウキビ砂糖を購入した。
更に製糖することにする。
サトウキビ砂糖の製糖は次のとおりだ。。
サトウキビ砂糖を溶かす
▼
不純物を取り除く
▼
煮詰めると砂糖の結晶ができる。
▼
結晶を分離する。
こういう順序で製糖されるが、
さほど難しい作業ではない。
魔道具化して効率的に砂糖を作る。
真っ白な砂糖とはいかない。
少し黄色っぽい砂糖になる。
ミネラル分が混じっているからだ。
これで甘みを準備できた。
次は待ちに待ったスィーツ各種の製造だ。
【スィーツ専属】
「どんだけ待たすの」
相変わらず文句だけは多いマリアである。
一日中、猫の格好をして日向ぼっこしてるくせに。
「君、毎日スィーツ食べてたよね? 働かないで」
「残念でしたー蜂蜜のチェックやってますぅー」
ああ、そういやそんなこと頼んだっけ。
でも、たまに1時間ぐらい作業するだけなんだ。
「お坊ちゃま、私もひたすら待ってました」
メイドのフィナが珍しく欲求を顕にする。
女性にとって、甘味は我慢できないものらしい。
「実は私も甘党でして……」
執事のランベルト、渋いおっさんが台無し。
まずは、クッキーから。
砂糖を使ったり、蜂蜜を使ったり、いろいろ。
ふんわりさくさく
しっとりさくさく
しっとり
の3種類の食感のクッキーを作る。
「他のクッキーなんて、これと比べたらバリバリするものばっかりだったよね」
この世界にはまだまだ甘みが少ない。砂糖は超高級品というわけではないが、それでも毎日買えるものでもない。それに、スィーツの技術が圧倒的に不足している。
次は、プリン。
鶏は、平飼いで飼料に気を配ったもの。
当然、非常に美味しいタマゴを生む。
これに質の高い水牛乳に砂糖。
香ばしいカルメラもね。
「私、ショートケーキよりも好きかも」
猫の格好で器用にスプーンを使いプリンをすくうマリア。多分、幸せそうな顔をしている。猫顔だけど。
実はさらに必殺技がある。
材料は同じ。カスタードクリームだ。
「あかん、なめるの止まらんわ」
「私も。ペロペロ止まらない」
「私も」
ああ、最後のはランベルトのセリフ。
おっさん、口の周り、色々ついてまっせ。
僕もなめるの止まらないけど。
4人でペロペロしていたら、なくなってしまった。
クッキーもプリンも作り方はシンプルだが、素材が圧倒的に素晴らしい。だから、僕も前世を含めて味わったことのない美味しいものができた。
スィーツに関しては、メイン候補がありすぎて絞りきれない。
売り物としてなら、クッキーとカステラは候補に入れてもいいかもしれない。
日持ちするからだ。
その2つをメインとし、毎日日替わりで色々なスィーツを提供する。そんな展開を考えた。
とりあえず、隣のバイシュで店を出して見ようか。
とはいうものの、人口8千人くらいだから、大した儲けにはならないけど。
さて、スィーツ担当だが……
「「「「「はいはい!」」」」」
「「「「「私が!」」」」」
「「「「「全力で頑張ります!」」」」」
もうね、自己推薦が多すぎる。
だから、10人のチームで一週間ずつ交代。
対象となる女性が100人以上いるからね。
男性もこっそり混じってるし。
一周するのに、二ヶ月半かかる。
なお、物凄いやる気を出したのがセリアだ。城で料理などしたことがなかったのに、ここでスィーツ作りに開眼。
セリアの要望に従って、前世の知識から様々な料理道具を考案。一躍、セリアは村のスィーツづくりのトップに躍り出た。
つまり、この世界でトップということ。
元々、セリアは魔法の細かい制御に長けていた。
繊細なスィーツをどんどん作り始めた。
これにやられたのが、残念聖女、ガース、チョロ子、ポンコツと様々な二つ名を持つマリア。すっかり、セリアの専属助手として納まった。
「私、セリアージュさんに一生ついていきます」
セリア、頼むよ。
それにしても、この領地にきて色々な食材に囲まれ、料理を研究しているうちに、ずいぶんと料理スキルが上がった気がする。
食材を見て新たなレシピが浮かび上がるとか、未知の食材を見て処理方法が浮かんでくるとか、非常にカンが鋭くなってきた。
料理そのものもだ。火加減とかも調整が随分と繊細になった気がする。
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