第47話 バイシュで売ってみた

 特産スィーツを隣町のバイシュで売ってみた。

 クッキーとカステラをメインとし、

 日替わりでいろいろなスィーツを並べた。


 大反響だった。


 売り切れ続出で、早朝からお客さんが並んだ。

 増産して対処したが、

 いつも午前中に売り切れてしまう。



 ところが、領主の子爵がレシピとか教えろと横柄な態度を見せ、見せないのなら販売させないとか、おかしな税金を取り立てに来たり、果てには売り子を拉致する動きを見せた。


 明らかな犯罪行為に対して、僕はサクッと必殺仕置人に動いた。子爵を教会の塔の上層にくくりつけ、


「もうしません。許して下さい」


 の大きな段幕をぶら下げてやった。


 大騒ぎになり、子爵は助けられたが、腹のたった僕の攻撃はまだ続いた。ベッドの中にテープレコーダーのような魔道具を忍び込ませた。

 人んちの寝室に忍び込むなんざ、簡単だ。


 子爵がそこで寝ると


「私が悪うございました私が悪うございました私が悪うございました……」


 延々と睡眠学習できるようにセットしたのだ。


 これらの陰険な仕返しにより、子爵は引退に追い込まれた。元々べっとりと太っていたのだが、引退直前はガリガリに痩せていたという。

 健康的になってよかった。



「あんたも大概ねー」


 猫の言葉は褒め言葉と受け取っておく。

 正直、甘い顔をしたらやられるだけだからね。


 ただ、ちょっとストレスが溜まってるのは認める。

 こうした理不尽な応対に対しては敏感に反応してしまう。城で命を狙われてきたから、少々過剰反応気味なのかもしれない。



 この件はバイシュ・ザップの両方で有名になった。

 はっきりとした証拠はないが、やったのは僕だとされた。されたというか、したんだけど。


 子爵家にはかなり恨まれている模様。

 もっとも隣の領地の統治は辛辣で、子爵家は領民に人気がない。隣の領地では僕の人気が高まったのも子爵家には我慢ならないようだ。



 なお、こっそりと移民募集もかけてみた。本当にこっそりと。多くのザップ村出身者が隣町のバイシュで暮らしているからだ。。


 すると、数家族が応答してくれた。

 仕事や住む家はできる限り世話した。


 それを聞きつけ、さらに十家族以上が移住してきた。1万人ぐらいまでパイがあるからね。

 どんどん来て欲しい。


 と思っていたら、村ごと引っ越してきた。

 飢餓で村が崩壊して、

 僅かな噂をもとに森の関所にやってきたのだ。


 30名強の集団だ。

 みんなガリガリで、足元がふらついている。


 僕はザップ村の隣に彼等の住まいを建てた。


「ありがとうございます。こんなによくして頂いて。天国にきた思いです」


「体力が戻ったら、君たちにも仕事を与えるからね。それまではゆっくりしてね」


「できれば、すぐにでも仕事がもらえませんでしょうか」


「うーん、じゃあとりあえず小麦つくってもらおうか」


 僕は荒れ地をざっくり開墾して畑にした。

 聞くと三圃農業をしていたとのこと。

 じゃあ、ということで混合農業を説明して、慣れてもらうことにした。栽培する作物はザップに定着したものばかりなので、大丈夫だと思う。



 なお、バイシュからザップへ行くには森を通る必要があるが、そこには関所を設けてある。

 通行料を取るわけではない。

 安全のために腕輪をしてもらうためだ。


 この腕輪なしでは結界・防御魔法のかかっているザップ村には入れない。それはバイシュの人たちにも周知されてきたが、まだ時々おかしな人々が迷い込んでくる。


 後日であるが、いろいろと防衛策を講じることになり、腕輪なしでは命の保証がなくなることになる。



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