第44話 村の特産品の開発 乳製品。マリアの二つ名はガース
「村長さん、僕はね乳製品を村の主力製品の一つにしたいんですよ」
「乳製品ですか?村には痩せた水牛ぐらいしかいませんが」
「水牛はどんどん買い入れます。飼料もね」
「はあ」
「あとですね、牧草地を広げましょう」
僕は畑の開墾に乗り出していた。
ただ、畑にむいていない土地も多かった。
それが川沿いの湿地帯だ。
「この広い湿地帯を牧草地にしましょう。土地が馴染んだら畑に転用してもいいですよね」
通常、湿地帯というのは畑にするのは困難だ。
現代日本ならば重機やダンプなどで
ガーとやるのかもしれない。
でも、この世界では庶民は手作業だ。
埋め立てしても地下から水が染み出したりする。
僕は村の開墾した畑から不要土を湿地帯に運び、
どんどんと牧草地を増やしていった。
周辺で販売されている水牛をできる限り集めた。
20頭ばかり集まった。
村の個人の水牛は高額に買い取った。
繁殖しつつ、当面100頭体制をめざす。
理想は1000頭体制だ。
農作業に水牛が必要な場合は、
魔道具を作って肩代わりさせた。
耕うん機、種まき機、刈取機とかね。
間に合わなかったら、僕が土魔法で対応した。
水牛に農作業をさせず、良好な餌を与え、
健康に配慮することで、水牛乳の質をあげる。
水牛の目当ては乳である。
水牛乳は非常に濃くて質が高い。
「昔の水牛のお乳と味がぜんぜん違う」
「ホントね。水牛に気を配るだけでこんなに美味しくなるのね」
担当は、アポリナーレとアルナルド。
■生クリームとバターを作る。
生クリームは温めた水牛乳を瓶に入れて
冷まして放置するだけ。
上層に生クリームができる。
大量に作りたいときは魔道具化する。
といっても、瓶を魔法でぶん回すだけだ。
すると、生クリームが分離する。
バターは生クリームを密閉容器に入れて振るだけ。
僕は前世でバター作りをしたことがある。
1時間以上容器を振って採取できたのは約50g。
密閉したはずなのに、漏れてベタベタしてくる。
人力では大変なので、これも魔道具化する。
「これが私たちの水牛から生まれたものなの?」
「ものすごいコクね」
「私の子供なんてバターだけ舐めようとするのよ。いつも叱るんだけど」
「ああ、ウチも。うちなんか自分の部屋に隠そうとしてドロドロに溶けちゃって。1週間バター抜きの刑にしたわ。毎日泣いてるの」
「あー、マリア。君もバター抜きな」
「なんでや、ほんのちょっぴりバターなめただけやで」
「あのさ。口の周りをちょっと綺麗にしようよ。バターでベトベト」
■モッツァレラチーズ(フレッシュチーズ)
チーズの作成手順は次の通り
水牛乳にお酢を入れてゆっくり温める。
▼
固まりができるので、濾す。
▼
さらに湯煎をして固まりを粘りが出るまで練る。
▼
氷水に入れて出来上がり。
厳密にはモッツアレラチーズじゃない。
モッツアレラチーズ(仮)といったところ。
初めてモッツァレラチーズが出来たときは、
村民にピザを振る舞った。
濃厚で新鮮なチーズの味にみんなが喜んでいた。
今までも水牛の乳製品は作ってきたのだが、
水牛を大切に育てることで、
驚くような品質の乳製品に生まれ変わった。
ピザ台も製粉したばかりの小麦粉を使う。
それを窯で焼く。
前世でもレストラン品質ができたと自負している。
「スィーツに続いて強敵が現れたわ。砂糖はいってないのに、食べるのが止められんわ」
「マリア豚さん、こんにちわ」
「誰が豚やねん」
「あっ、ブタさんごめんね」
「アホゆーとるわ」
「あのね、君、プヨプヨになってきたの気付いてる?」
「太ってないですー。ちょっと昔の服が着れなくなってるだけですー」
「まあ、いいんだけどね。今君のためにいくつかドレスを作ってるけど、多分全部おじゃんだな」
「……ちょっと走ってくる」
■ヨーグルト
乳酸菌を発見するために簡単な顕微鏡を作成する。
1000倍程度まで観察できる。
酸っぱくなった牛乳を顕微鏡で観察する。
雑多な細菌がいる。
「なんや、いろんなものがウヨウヨおるんやな」
「それが細菌だよ。その中で乳酸菌を特定するんだよ」
「どうやって?」
「地道に、一つずつ細菌を取り出して培養・観察をするわけ」
「なんや、面倒やな」
「細菌を取り出すのはマリアの仕事」
「ゲロゲロ」
「スィーツが待ってるよー」
「よっしゃ!まかせとき!」
乳酸菌といっても非常に種類が多い。
調べれば調べるほど乳酸菌の種類が増えてくる。
適当なところで打ち切った。
これらの乳酸菌をもって、水牛乳を発酵させ
ヨーグルトを作る。
これに砂糖を加えて水牛乳で薄めた製品は、
ヨーグルト自体よりもヒットした。
又、水牛乳に柑橘類を混ぜた疑似ヨーグルトも
スマッシュヒットを記録した。
ヨーグルトは保存性がよくなるので、
多くの人に喜ばれるだけでなく、
商品としても安全性が高まる。
「マリア、これ健康にいいんだよ」
「ほんまか。これ飲んでると痩せる?」
「これしか飲まなかったらね」
「わかったわ。いいこと教えてくれてありがとー!」
「(まさか、冗談って気づくよね?)」
1週間後、減量に成功したマリアが道端に倒れているのが発見された。
「お腹すいた……」
■クリームチーズ
クリームチーズの作り方はいくつかあるようだ。
僕は、生クリームと水牛乳を混ぜて乳酸発酵させ
ホエイ(水溶液)を除いて作った。
このクリームチーズでベイクドクリームチーズケーキとレアクリームチーズケーキを作った。両方とも大好評であるが、特にレアクリームチーズケーキは腰をぬかすほど好きな人が出た。
マリアである。
食べた瞬間にあまりの美味しさにぺたんと尻もちをついて動けなくなってしまったのだ。
「あかん。美味しすぎる。ヨーグルトではえらい目にあったけど、プラマイゼロや。もう歩けんでもええわ。我が人生に悔いなし!」
などと漫画の読み過ぎなフレーズを連発して恥ずかしい。そのくせ、次のスィーツができあがると、立ち上がってダッシュ。
あそこまで本能に忠実だと清々しいものがある。
うん、彼女の二つ名は“ガース”で決定だな。
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