第43話 村の特産品の開発 製粉
では、食べ物の基本中の基本。
小麦粉の製粉から始めよう。
製粉業は村ごとに製粉する人が決まってたりする。
既得権益とかあって、けっこう繊細な仕事になる。
だから、村で製粉を請け負っていたアルベルトに
担当してもらう。
それと、補助にアウグストをつける。
補助のアウグストは一ヶ月たったら、
他の人に変わる。
こうやって、持ち回りに村人に製粉を経験させる。
僕の始めた事業を担当する人には給料を渡す。
週給制だ。
現金が手に入るので、
農作業よりもこちらで働きたい人が多い。
楽だしね。
では、製粉機を作る。
製粉の流れは、次の通り。
小麦の選別 石とか未成熟の小麦とかを弾き
小麦だけにする。
▼
水をまく 小麦を湿らせて、砕きやすくする。
▼
小麦を砕く 2つの回転速度の違うロールを
組み合わせ小麦を砕いていく。
▼
別にしていく
表皮は軽いので吹き飛ばす。
全粒粉の場合は表皮も含める。
小麦を砕く⇒篩は何度も繰り返し
少しずつ製粉していく。
▼
篩にかけた小麦粉から袋に詰めていく。
魔法で代替できるのなら、作業を魔法化していく。
つまり、
小麦の選別 魔法で一気に。
▼
水をまく 水をまくのは魔法で、一晩寝かす。
▼
小麦を砕く これも魔法で粉砕する。
熱が出ないように気をつけて。
▼
篩にかける 表皮を魔法で弾いていく。
▼
袋に詰める これも魔法化できる。
この通り、大部分を魔法化できる。
しかも、20世紀レベルの製粉が可能だ。
この流れに沿って、製粉魔道具を作る。
作業員に求められるのは、小麦を投入するのと、
小麦粉が詰められた袋を閉じ、運搬すること。
正常に魔導装置が働いているかチェックすること。
「こんなに簡単に素晴らしく良質の小麦粉ができるんですね」
「間違いなく、王国一番の小麦粉だよ」
「世界一だね」
村人は製粉機械を見て驚きの感想を漏らす。
お世辞じゃないと思う。
この世界において、この小麦粉はチートだ。
そもそも、雑穀が中心で小麦粉が珍しい。
その小麦粉だけど、
小石が混入しているのは当たり前
未成熟の小麦とか雑草とかが混じっている
表皮が混じっている
これらが原因で、
この世界では品質の高い小麦粉は生産できない。
全粒粉も捨てがたいので、
表皮は質の高さ低さに関係ないかもしれないが。
王族向けなどだと丁寧に製粉されることもある。
しかし、大量に安定した製粉はこの時代ではムリ。
「じゃあ、記念すべき初生産分は、村人に無償で配ろうか」
村の人に来てもらい、小麦粉を配る。
村人は無料でもらうというよりも、
質の高い小麦粉に驚いている。
【村の特産品の開発 パン】
小麦粉が出来たら、パンづくりだ。
まずは、パン酵母づくりから。
この世界では酵母はある。
理由もわからず、ビール樽を利用したりしている。
それはビール酵母で、パン向きの酵母ではない。
酵母づくりは、温度や湿度にかなり左右される。
少なくとも、気温や湿度は一定になるように、
空気調整室を作る。
エアコンや自動除湿・加湿機を装備した部屋だ。
入室するときにはクリーンルームを通る。
余計な菌類や埃をシャットアウトするためである。
入室するときには専用の作業衣を着る。
ここまで気を配っても、安定させるのが難しい。
魔法化するのが難しい作業だ。
果実を培養して果実エキスを作る。
▼
果実エキスに塩と小麦粉を混ぜ、発酵させる。
▼
元種が膨らみ気泡が出始め酵母が培養されていく。
上記の要領で酵母を作る。
続いてパンづくり。
パンも特に発酵が難しい。
小麦の種類、砂糖・酵母の量、温度、湿度など
一定の環境を作るのが望ましい。
一定の品質のパンを作るためだ。
環境さえ整えば、
小麦をこねる
▼
空気を抜きつつ発酵させる
▼
焼く
これの多くが魔法化できる。
◇
初製造のパンを村民におすそ分けした。
「私たちの作った小麦からこんなに凄いパンが」
「魔法を見てるみたい」
大部分、魔法で作ったんだけどね。
でも、魔法なしでもそのクォリティは出せるよ。
習熟度次第で、魔法なしのほうが質が高くなる。
パン製造はしばらく僕が担当することにした。
そして、メイン担当としてアッスント。
補助はやはり持ち回りで体験してもらう。
才能のある人を選別して、
ゆくゆくは専任体制にするつもりだ。
単純な作業じゃないからね。
なお、軌道に乗ったら
小麦粉とパンは無料で領民に配ることにした。
当たり前だが、大変喜ばれた。
その代わり、
「働かざるもの(勉強しないもの)食うべからず」
を領民にきつく指導した。
怠惰な人間は、まず僕の“指導”が入るが、
次はランベルトの“指導”。
それでも治らないものは村追放とした。
村を追放されるような怠惰な人間は
ずっと後年になるまで出ないのであるが。
ランベルトの“指導”だからね。
二つ名が“ザップの星一徹”。
「君、このままだとランベルト行きだけど」
これで大抵の領民の気が引き締まる。
お陰で、
「大人しくしないとランベルトさんがくるよ」
子供のしつけにも使われるようになった。
「私も領民から慕われるような役割がほしいんですが」
ランベルトがしょぼしょぼの顔で言う。
「ある意味、領民から慕われていると思うよ。だから、大丈夫。多分」
慰めにもならないことを言う僕。
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