第38話 襲撃

 朝早く、城を出発する。

 僕と執事ランベルト、メイドのフィナ。

 それから、猫三匹。

 実はセリア、メイドのローリア、聖女マリア。


 首都近くのトーハウ川の港から一気に

 領地の近くまで船で北上する。



「別に僕たちについてこなくてもいいんだよ? 君は自由だ」


「何いけずゆーとんねん。私があんたを守ってあげてるのがわからんの?」


「いや、君、クッキー食べてるだけでしょ」


「ずっと警戒魔法を張り巡らしてるの」


「あのさ、食べるかしゃべるかどちらかにしたほうがお利口さんに見えるよ」


 マリアは警戒魔法が得意らしい。

 でも、最初に気づいたのは執事ランベルトだった。


「出ましたかな」


「用意だけは準備万端にね」


 早速、おでましになった。


 僕たちの船を囲むように近づいてくる4艘の船。

 こちらめがけ弓矢や魔法の詠唱準備をしている。


「「「「「うわーっ!!!」」」」」


 僕は風魔法を発動した。

 一気にひっくり返る4槽の船。

 こいつら泳げるのかな。

 寒いのに。



 僕は指揮官らしき男を引っ張り上げ、

 凍える男に尋問する。


「オレはしゃべらんぞ!」


「いや、しゃべんなくてもいいから。今から目を剣で突き刺すから」


 ランベルトに男を押さえつけてもらう。

 瞼をこじあげて、ゆっくりと剣を近づけていく。


「すまん、悪かった、やめてくれ、しゃべるから!」


「しゃべるなって。目を刺せないでしょ?」


 男は涙目で喚くので許してやった。

 船が揺れるので、2・3回、

 目の周りを突き刺してしまったが。

 ギャアギャアうるさいっての。


 で、指示した人物を特定する。

 そいつは城では次男の悪事担当で有名なやつだ。



 僕は失神した指揮官を連れて

 転移魔法で城に戻り姿を隠した。

 そして、その悪事担当を捕まえて

 城の塔に裸でぶら下げてやった。

 指揮官と一緒に。


 今のところは仕返しはこのぐらいだな。

 生存競争が始まっている。

 味方の少ない今、最もいいのは敵を殲滅すること。

 

 しかし、条件が整っていない。

 領地をしっかり確保するまでは。



 それにしても、ランベルトは荒事に慣れてそうだ。


「元冒険者Bクラスでしたからね」


 十代でBクラスになったから、

 本当に期待の星だったそうだ。

 そこを見込まれて、当時の僕の母の実家、

 つまりお祖父様が雇用。


 彼の借金が嵩んでいたらしいが、

 それもお祖父様が精算。

 その後、僕につけてくれたわけだ。


 あのときは、お祖父様も勢いがあったな。

 僕も焼き肉レストランで役に立てたかな。

 僕の体制が整ったら、

 お祖父様に話をしにいかなくちゃ。



「やっぱり襲ってきましたか」


「城の回し者ですね」


「おにいさまに対する当たりが厳しすぎると思ってたけど、それ以上ね」


 セリアは驚いていた。


「あの程度でしたら、心配することはないよ。1000人ぐらいでも大丈夫」


「まあ、頼もしいですわ」


 本当に多少の軍隊ならあっという間だと思う。

 これからは、備えも万全にするつもりだし。



 ところで。


「マリアさん。誰が警戒魔法だって?」


「ちゃうねん、とっくに気づいとったけど、先にランベルトさんに言われてしもただけや」


「君の双子のお姉さんと交換したいんだけど」


 マリアは自分がどれだけ優秀か主張し始めたので

 魔法で口を閉じた。

 半日そのままにしておいたら、

 涙目で土下座したので、許してあげた。


 マリアは厳しく接して丁度になるタイプだと思う。

 ワガママというよりも自分に忠実でマイペース。

 しかも、かなりナマカワ。

 かなりタフなので、

 少々のことでは全くへこたれない。



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