第26話 成人までの3年間、けっこうな金持ちになった。1

■ロレンツォ12歳~


 第2の洗礼式が終わり、

 僕は領地経営に向けて必要な物を捜すことにする。


   砂糖

   カカオ

   薄力粉用/強力粉用小麦

   鉱山 金と銀、カオリン、鉄


 主要なのは以上だ。


「マリア、遊覧飛行しようか」


「え、めちゃ嬉しい!そういや、あんた、飛行魔法の持ち主やったな。で、うちになにさせるんや?」


 マリアはこういうことには話が早い。


「そのかわり、鑑定魔法で手伝って欲しい」


「えーけど、何探すんや?」


「ゴールド。シルバー。財宝」


「凄すぎるやん!はよ、いこ」


 彼女の鑑定魔法はずば抜けている。

 特に宝石鑑定。

 やっぱり好きなんだろうね。

 だから、地表に露出さえしていれば鉱山も発見する。

 或いは、川の砂金なんかでも遠くから認識する。


 彼女の目利きの凄さは日頃からわかっていたから、

 鑑定飛行に誘ってみたのだ。

 僕の目論見は的中した。

 

 教会のミサは朝6時から午前中いっぱい。

 それ以外は全くのフリー。

 なんてホワイト。


 でも、彼女は城からは出られない。

 それもあって、城から出られる僕の提案は

 彼女的にはナイスなわけだ。



 昼食後マリアを猫に変身させて

 服のフードに放り込み、

 国中を、下手すると隣国まで飛んで探し回る。


 飛行速度は時速500km位出るようになった。

 3時間もあれば相当な範囲を探し回れる。

 それ以上は夕飯に間に合わないからマリアが怒る。

 あ、結界で守られているから寒くはないよ。



「あんた、猫使いが荒すぎ。鉱山なんて、そう簡単に見つかるわけないやん」


 いつもブーブー文句を言う聖女マリア。

 とっくに化けの皮が剥がれて、

 地をさらけ出すようになっている。


「今日はね、鉱山はやめて小麦を探すよ。それがあれば最上のクッキーを作れるよ」


 大抵は、スィーツで釣る。

 もの凄くチョロい。


「あはんは。はんはほふぃーふはひへはほはれんほうひはったは。へひひんほっへは(あかんわ。あんたのスィーツ無しではおられんようになったわ。責任とってや)」


 軽口を言いながら、クッキーを口いっぱいにほおばってしゃべる姿はあんまり……


 こんなんでも、(僕以外の)人前では完璧聖女。

 本当に清浄なる超美形の完璧聖女。


「あれは双子のお姉さんかな?」


「あっちが本当の私。これはあんたに合わせたげたの」


 ああ、そういう設定ね。


「設定いうな」


 マリアは飛行魔法を気に言ってるんだけどね。

 ジェットコースター的に。

 最初乗せた時なんかキャーキャーいってたから。

 両手をあげてバンザイとかしてたもんね。

 妹のセリアと気が合いそうだ。


 それに、金や銀の鉱山を発見したときなんか、

 異常に興奮してたから。

 多少は飽きても大丈夫。

 新たな金銀鉱山を発見すればいいから。


 ◇


 セリアにはマリアのことを伝えている。

 国の宝(一応)である聖女様を

 こっそり城から脱出させようというのだ。

 妹も救うつもりだしね。


「まあ、なんて素敵な響きですこと。王宮から脱出ですって?」


 セリアの食いつきが凄かった。

 彼女には結婚話が進行していて、

 本当に憂鬱そうだった。


 セリアは11歳。

 この世界では結婚話がきてもおかしくない。

 結婚というか、婚約だけどね。

 やみくもなプロポーズに対して

 バリアを張る意味もある。

 で、実際の結婚は15歳以降になる。



わたくしも猫。長毛の可愛いのにしてくださらない?」


 セリアは立派なレディに成長しつつある。

 言葉使いなんか、僕より数段上になった。

 歩く王室典範であるフィナが教育してるし。

 数年前の幼いセリアとは全くの様変わりだ。


「長毛は手入れ大変だよ?」 


わたくし、身の回りに関する魔法は得意でしてよ」


 セリアはいわゆる生活魔法の大家だ。

 生活魔法と馬鹿にするなかれ。


 高度な清浄魔法となると、

 回復魔法と同程度の魔法の緻密さが要求される。

 体の表面から汚れだけを取り除くというのは

 とても難しいのだ。


 やりすぎると皮膚がボロボロになったりする。

 だから、大抵の清浄魔法は埃を吹き飛ばす程度だ。



「では、セリアはラグドールだね」


 ラグドール?と首をかしげるセリアに

 変身魔法をかけた。

 鏡を覗き込むセリア。


「まあ、なんて可愛くて気品のある猫ちゃん」


 白が基調のふわふわの長毛に、薄茶が交じる。

 これはセリアの髪の色。

 目はブルーで、やはりセリアの目の色。


「気品があるのは、セリアがそうだからだよ」


 どこぞの聖女様も外見は気品があるのだが、

 セリアは中身も淑女の鏡。



「イテッ」


「なんか、どつかんとあかん気がした」


 その鋭さを前向きな方向でみせてくれよ。



 これをきっかけに、セリアは変身魔法を覚えた。

 マリアや侍女ローリアと一緒に

 好きなときに猫になって遊んでいる。


 マリアにも変身魔法を教えているのだが、

 マリアが変身魔法を使うと、

 なぜか毛虫になるらしい。


「このまえ、あんたが私を毛虫にしたでしょ。そのトラウマが残ってるの!」


 トラウマ? きっと毛虫が気に入ったのかな。

 暇になったら、また毛虫にしてあげよう。

 今度はどつかれないようにガードするからね。



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