第25話 次男レオニダ視点2

「蓋を開けてみたら、あの三男は魔力が発現していませんでした」


「まさしく『神童の過ぎればただの人』でした」


「ほっとしました」


 奴の母親の家は元々は大領地の地主だった。

 それが2代前の主が男爵に叙爵した。

 莫大な上納金を国に収めたのだ。


 そして、子爵・伯爵と代を追うごとに陞爵した。

 いったい、いくら金を使ったのだ?

 典型的な成り上がり者で王国にも敵が多い。


 そして、腹立たしいのは、

 元々は庶民の癖してなぜか王宮に入り込んだことだ。

 ひとえに母親の美貌ゆえだ。


 実際、彼女は美しかった。


 俺はずっと自分の母が一番美しいと思っていたし、

 実際、キレイだった。


 しかし、奴の母親を見た時は驚いた。

 奴の母親は光り輝いていた。

 俺は幼かったが、それでもすぐにわかった。

 彼女の美しさが。


 それに……言いづらいが、

 奴の母親は実に優しげだった。

 俺は包みこまれるような柔らかい光を感じた。

 それは俺の母親にはほとんど感じられない表情だ。

 彼女の愛情を一身に受ける三男。

 腹立たしかった。


 ましてや、奴の頭脳。

 生まれて半年で言葉を話し、

 2歳で2ヶ国語にチャレンジし始め、

 4歳で国際政治を語り始めた。


 俺は父の王の第1の後継者だと思っていた。

 長男がグズだったからだ。

 俺には才能がある。

 回りもそう囃し立ててくれていた。


 しかし、奴の才能はその評価を一変させた。

 誰も俺に注目しなくなった。

 褒めた称えるのは奴の才能だけ。


 ありえない。

 卑しい家の出身なのに!

 あの美しくて優しげな母親の愛情の元、

 神童と称される奴の存在。

 滅するべきだ。

 


「これで、王室を追放されることがほぼ決定しました。でも、安心してはいけません。12歳過ぎても魔法が発現したという例がないわけではありません」


「そんなことがあるのですか?」


「神への信仰が深いとそういうことがあるようです」


「奴が教会に通い詰めるなんてことは聞いたことがありませんが」


「ええ。でも、気を抜いてはいけない、ということです。まだあの頭脳が残っているのです」


「奴はただの神童だったのではありませんか」


「そうかもしれません。でも、慎重に才能を隠しているかもしれません。あの眠り毒事件以来、存在が薄くなったのがその証拠です。不自然です」


「ううむ。今後はどうすればよいでしょう」


「引き続き、身辺調査、それと舞台から完全に葬り去ることを考えましょう。最低でも、追放先は再起不能な場所を王に選んでもらいましょう。それに」


 母は話を続けた。


「あの女の一粒種、消し去らねばなりません」


 怖い。

 母の目に憎悪が宿っている。


「卑しい出身というのに、私に恥をかかせました。その容姿で。本来は私のほうが美しいはずなのです。そうあるべきなのです。もっとも、もう地上からいなくなりましたが」



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