4 ロレンツォ12歳~

第23話 12歳 2つ目の洗礼式

■ロレンツォ12歳


「お坊ちゃま、12歳の誕生日おめでとうございます。いよいよですね」


「うん、長いような短いような。やっと洗礼式だ。魔法発現を隠し通せると思うけど」


 ジョージャン王国には2つの洗礼式がある。

 第1は、6歳の時。普通の洗礼式。

 生き伸びたことを祝う。


 この世界は幼児の死亡率が高い。

 6歳まで生き延びれば、

 かなりの確率で大人まで成長する。

 それを祝い、かつ教会に名前を登録する。


 戸籍みたいなものだな。

 前世の外国にもそういうシステムの国がある。


 そして、第2の洗礼式。

 12歳で魔法の才能を決定する式がある。


 厳密には洗礼式ではないのだが、

 重要性から第2の洗礼式と呼んでいる。


「これで僕が無事に追放されるかどうかが決まる」


「あの眠り毒事件以来の努力が実るかがどうかが判明するのですね」


 この洗礼式で魔法がない、とわかると

 一生うだつが上がらない。

 王族や貴族は致命的だ。


 王族の法律である王室典範にも明記されている。

 魔法がないものは、王位継承権喪失、王室追放。

 王室追放は、15歳になってからである。


 僕たちはそれを狙ってきた。

 だから8歳の眠り病事件以来、

 ずっと魔法発現を隠してきたのだ。


 ◇


「では、この白い水晶玉に手を置きなさい」


 教会へ行くと、神官からそう言われる。


 僕はちゃんとステータスを誤魔化しているか

 チェックしながら、水晶に手を置いた。


 水晶は白く光り輝き、

 ステータスを空中に描き出した。



「残念ながら、魔法の才能はありません」


 神官は冷酷な宣告を行う。


「魔法の才能がないだと?」


「はい、残念ながら」


 父である王の驚きと侮蔑の視線が僕にささる。


「何たる不名誉なことを。王室から魔法の才能のない者が出るのは前例が殆どない。このような不祥事、耐えられん」


 そう言うがはやいか、

 王は教会を出ていってしまった。

 周りのものも僕に対して失望と嘲りの視線を送る。

 僕は計画通りにことが進んでほっとしたが、

 この視線は不快だった。



 魔法の才がないと知った兄弟たち。

 そりゃ、侮辱の嵐。

 何しろ、一時は僕は天才とまで言われたから。


「神の子、蓋を開ければ唯の人」


「だいたいおかしいんだよ。階級の低い母親から生まれた子供が」


「ホント、王家の恥。早く逝って」


「今日は縁起が悪い。嫌なものに出会ってしまった」


「誰か早く浄化魔法を。臭いものが通るぞ」


 兄だろうが、弟だろうが、罵詈雑言の嵐。

 ホント、醜い人たちだ。

 いつか仕返ししてやるつもりだけどね。



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