第22話 11歳、マジックバッグで暮らしてます

■ロレンツォ11歳


 この頃になると、僕は城の中の本は全て読み漁り、

 暗記してしまっていた。

 僕は映像記憶能力の持ち主だから、

 頭の中が図書館だ。


 得意・不得意魔法もはっきりしてきた。


 得意なのは、空間系の魔法。

 転移魔法。マジックバッグ。飛行魔法。

 飛行魔法も風魔法ではなく、

 空間魔法として発動した。

 その方が効率がいい。


 マジックバッグに入れないかな。

 と思ったら、入れた!

 古代書にはレベルがあがれば

 マジックバッグに入れるとあったが、

 とうとう僕もそのレベルに達したようだ。


 中に入っても、

 見渡す限り白い空間があるだけだった。

 息はできる。

 多分だけど、僕の周囲に結界が張ってあり、

 周りとは空間そのものが違うようだ。

 でも、僕がしまい込んだものは

 どこにあるんだろう。


 残念ながら、魔法は亜空間では発動しなかった。

 これもレベル向上で発動するようになるらしい。



「お坊ちゃま、どこですか、ご飯ですよ~ おかしいわね、どこかへ出かけるとは聞いていないのに」


 メイドのフィナが僕がいなくて不思議がってた。

 外出時にはフィナに一言声をかけるから。


 でも外の声は聞こえるから、

 緊急のときは姿を現すことができる。

 驚かさないように、誰もいないところに出るけど。


「最近、実験でマジックバッグで生活するようにしてるんだよ」


「マジックバッグって、生身の人間が入れるものなんですか?」


「レベルが上がると入れるみたい」


「お坊ちゃま、それですと旅に出てもホテル要らずですか。お金使わなくて済みますね」


 僕と一緒にいるせいか

 苦労性が身についてしまったフィナ。

 ごめんね。



 空間を切り裂いて何かを瞬時に空間に放り込む、

 つまりこの世界から消滅させることも簡単だ。


 例えば、相手の剣を消すとかね。

 剣についている紋章を消すなんて小技もできる。

 もちろん、相手の存在自体を消すこともできる。


 やったことはないけど。


 というのは、兄弟の僕への侮辱がひどくて

 時々腹が収まらないときがあるのだ。

 そんなときはいっそのこと、奴らを消し去ろうか

 なんて黒い気持ちが沸き上がってくる。



 唯一、王族で僕の味方をしてくれるのは妹の

 セリアだけ。

 女の兄弟は彼女のみ。

 両親が同じなのも彼女だけだ。


「できれば、王族からはなれて遠くでくらしたいですわ」


 セリアは、僕と同じで王族を嫌っている。


わたくし、このままどこかのばか貴族とけっこんさせられるのよね」


 深くため息をついて、黒い発言をするセリア。

 彼女も9歳になり、急に大人びてきた。

 どうやら、日夜ローリアと女子会が忙しいらしい。

 だから、耳年増になってきている。


 だけど、今の僕にはどうしようもない。

 僕が王宮から追い出されるときに

 連れ出すことができればいいんだけど。



 話を元に戻すと、身につけたい魔法は回復系の魔法。

 それと、鑑定魔法。

 鑑定魔法はこの世界にはないのかな?


「鑑定魔法はあるにはあるのですが、かなり珍しいですね。冒険者ギルドへ行くと鑑定魔法持ちが活躍してますよ。かなりの高級取りですね」


 アルベルトが答えてくれた。


「鑑定魔法は、学習して身につくものではないんですよ。神からの授かり的なものといいますか、ある日突然発動できるようになるらしいですよ」


「ラッキーな魔法なんだね」


「ですね。宝くじがあたったようなものです」


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