第19話 お祖父様の家に遊びに行く3
■ロレンツォ10歳
「ロレンツォよ。おまえのスキルはどうなっておるのじゃ?」
僕は特に土魔法と風魔法の習熟度が
爆上がりしていた。
それぞれレベル6で、
魔法上級者としても上位であり、
感触としてはすぐにでもレベル7つまり
名人級と言われるレベルになりそうだった。
王国人口が1千万人いるが、
名人級の魔法士は何人いるかというレベルである。
そのレベルに11歳の子供が到達する。
「風魔法と土魔法のスキルレベルが6じゃと。しかも、すぐにでも7になりそうじゃと。名人クラスか。名人クラスじゃと、王国には他にいないかもしれんの」
「(ロレンツォの才能だけじゃないよね。やはり転生したことで神の力を授かったのかな)」
僕は内心で考えたりする。
一通りの作業を終え、
転移魔法でお祖父様の館に戻ってきた。
「便利なもんじゃの。ロレンツォと一緒じゃないと使えんが、それでもびっくりだ。なあ、ベルや、オレはさっきまで南の島にいたんじゃぞ」
お祖父様はお祖母様のことをベルと呼ぶ。
お祖母様の本名はベルティーナだ。
ちなみにお祖父様の名前はフェデリーゴ、
伯爵である。
「転移魔法ですか?そんな、御伽話のような魔法を本当にロレンツォが使えるのですか」
「ロレンツォは大魔法使いじゃぞ。王国どころか、この世界全体でもトップクラスじゃ」
「お祖父様、それは贔屓がすぎると言うもの……」
「ロレンツォや、あんな土魔法や転移魔法やらを使える魔法使いなぞ、ワシは見たことも聞いたこともないぞ。世界一と言わんだけ、ワシは控えめにしとるわ」
毎日、島とを往復しながら様子を観察した。
10日後、お祖母様もいっしょに
南の島に行くことにした。
熟成した牛の状態を見るためだ。
「まあ、本当にここが王国から千キロも離れた島なのですか。信じられない光景ですね。牛さんも見渡す限り」
さっそく、僕はランチの用意をする。
といっても、焼いた熟成肉に塩をつけただけだが。
「臭みがないな。それに柔らかくてジューシーではないか。濃厚な味も舌に広がるの。軽く草味というところか。これなら、王国でも最上級の肉として店の取り合いになりそうじゃの」
「私もこれほどのお肉には出会ったことがありませんわ。何よりも臭みがないのが嬉しいわ。私、肉の臭みがあまり得意じゃないの」
僕は、マジックバッグから新鮮な内臓を取り出し、
適切に処理をして焼いてみた。
「これが牛の内臓か。新鮮なものだとこんなに美味しいのか」
「ひょっとしたら、お肉よりも美味しいわ」
「内臓は傷みが早いので、マジックバッグから出したら、すぐに処理する必要があります。時間がたてば捨てるしかありません。でも、庶民の味覚として低価格で提供してもいいんじゃないでしょうか」
「そうじゃの、肉はハイソ向けで、内臓は庶民の味方として提供すれば差別化も図れそうじゃの」
実際に、内臓は庶民の味覚として親しまれている。
しかし、足が早いため限られた人しかたべない。
僕とお祖父様は定期的に現地に赴くようにした。
問題があっても一瞬で往復できるから大丈夫だ。
これだけの牛がいるのに、ウチが独占している。
競争相手がいない。
この牛たち、下手にちょっかいを出すと
命に関わるからね。
僕が関わることで輸送費はほぼゼロ。
しかも、熟成方法の品質の高さが
そのまま熟成肉の品質の高さに直結している。
この島の野生牛は少し硬いのだが、
熟成によってその弱点も目立たなくなった。
家畜化のほうも問題がなさそうなので、
100頭ばかり家畜化した。
5km四方を壁で囲って牧場とした。
ゆくゆくは千頭程度を家畜化する予定である。
そのために、スタッフの増員・育成や
飼料の調達などを盛り込んでいく。
スタッフはお祖父様の領内の経験者を投入する。
牛には草原の草ではなく、質の高い飼料を
牛に与えるようになった。
牛も既に野生牛ではなく、肉質も改善されてきた。
草原で育つとどうしても草臭さが残るが、
飼料で育てると臭みがなくなる。
筋肉質だった牛も家畜化されると共に
適度に脂肪がのり、より柔らかくなった。
合わせて、乳製品にも取り掛かった。
チーズやバターといった加工品だけでなく、
マジックバッグを使うことで
安定して牛乳を供給できるようになった。
こうしてガルディーニ牧場は味・価格ともに
非常に競争力が高まった。
質の高い肉や乳製品を市場に投入することになる。
「ロレンツォよ、島の牛の原価は王国の牛よりも低い。しかし、店は高級志向でいくぞ。こんな美味い肉は高くても売れるからな」
島産の牛は、お祖父様の領内の牛の半額もしない。
何しろ、金がかかっていない。
数人の人件費と飼料代だけだ。
肝心の牛はほぼ無尽蔵にある。
しかし、価格を低くすると価格破壊をおこす。
領内の畜産業者がピンチになる。
それに、低くする理由がない。
高くても売れるのだから。
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