第18話 お祖父様の家に遊びに行く2
■ロレンツォ10歳
「ようやくついたの」
お祖父様は貿易もしている。
お祖父様とともにお祖父様所有の船にのり、
パパ平原に乗り込んだ。
「ええ。中途で魔物にも襲われず、無事航海がすんでほっとしました」
王国から島までは直接行くと千キロほどある。
僕の飛行魔法では人を連れていくには
力が足りない。
船でもちょっと厳しい距離だった。
そこへ行くにはまず西へ沿岸沿いに航行し、
半島を南下し、
最終的に300キロほど海を渡ることになる。
1日半ほどの旅だ。
◇
現地に詳しい人を同行させて島を視察すると、
野生の牛の群れ!
「見渡す限りの牛の群れじゃの。数百万頭いると言われても納得できる」
「本当に雄大な光景ですね。これだけの資源、どこかの国が狙っても不思議はないでしょう」
「こいつらな。かなり獰猛らしい」
というが早いか、牛が僕たちに突撃してきた。
「ドカーン!!!」
牛がひっくり返って失神した。
「おお、凄い衝撃じゃったの。ロレンツォの結界・防御魔法がなかったら危ないところじゃった」
「この衝撃から考えるに、普通の人間ではこの島の征服は難しそうですね。軍隊連れてきても、この数ですからムリなんじゃないですか?」
「お前の言う通り、昔一個大隊でやってきた国があったそうじゃ。3日で全滅したらしいぞ」
これは難儀だ。
僕はまず頑丈な建物というか、要塞を作った。
100m四方、高さ5m厚さ1mの壁を作り、
その中に事務所となる建物を立ち上げた。
しょっちゅう、牛が建物めがけて突撃してくる。
衝撃音がうるさくて防音建物にしたくらいだ。
地下には肉の熟成室と、転移魔法陣室を作った。
「うむ、お前の魔法にはいちいち驚かさせれるの」
「壁には強化魔法をかけてありますから、あの程度の突撃なら問題ないと思います。おそらく、最上級の核激魔法でも持ちこたえられるかと」
1kmほど離れてから核激魔法を起動させ、
壁にぶつけてみた。
傷一つつかなかった。
用心として、要塞全体に結界・防御魔法をかける。
「さて、どうするか。普通の人間では牛を捕らえられんじゃろ」
「方法は二つ考えています。一つは僕が魔道具を作ります。一撃で倒すことができると思います。もう一つはなんとか家畜化することですかねえ」
「可能か?」
僕は、ライフルのような魔道具を作ってみた。
燃料に魔石を使い、
石礫は実用射程500mほどある。
狙った獲物を自動的に追跡する優れものだ。
しかも、石礫の硬度はダイヤモンドに等しい。
「お祖父様、これでどうでしょうか。魔導銃って言います。古代魔法書で覚えました。スコープで獲物を狙って、スコープの中の十字が光ったら、引き金を引いて下さい」
「こうか?よし」
銃から勢いよく飛び出した石礫は牛の額を貫いた。
「おお、凄いの。これもあまり人の目に触れさせられんな。軍事目的に使おうとする奴がたくさん出てきそうじゃ」
「お祖父様、魔導銃に使用者登録をしましょう。使用者以外が引き金を引いても弾丸はでません」
「うむ、しばらくはワシと部下で練習がてらハンティングを楽しむか」
「お祖父様、銃の魔力がなくなったら、この魔石にお祖父様の魔力を補充して下さい」
「よし、わかったぞ」
「問題は家畜化ですね。性質がおとなしくなる足輪を作ってみましょう。アンチノルアドレナリンという怒り・敵意・暴力といった攻撃的な感情を抑制する仕組みにするわけです」
「ふむふむ、それも古代魔法の知恵かの」
「はい、お祖父様。これも気をつけないと、人間の奴隷化に転用されてしまいます」
僕は試しに足輪を一つ作成し、
捕らえてきた牛の脚につけてみた。
腕輪は牛の脚にピッタリのサイズとなり、
やがて脚と同化していった。
「牛の位置情報もわかりますね。盗難防止に役立ちます」
「ほう、確かに大人しくなったの。まるで羊か山羊のようだ」
「これでしばらく様子を見てみましょうか。上手くいくようなら、大量生産して牧場を作りましょう。飼料を良くして、肉質も向上させたらどうでしょうか」
お祖父様が狩った牛はすぐに血抜きし、
解体して地下熟成室に吊るした。
内臓は専用のマジックバッグに収める。
隣の敷地には牛の慰霊碑を作った。
これは日本人的な感覚かもしれない。
「牛への慰霊?ふむ、命に敬意を払うのは大切かもしれぬの」
お祖父様は僕に賛同してくれて、
一緒にお参りしてくれた。
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