第17話 お祖父様の家に遊びに行く

■ロレンツォ10歳

 

 飛行魔法で距離を稼ぐことができるようになった。

 そこで、久しぶりにお祖父様の家を訪問した。

 同行するのはアルベルト。

 他の三人はお留守番。

 

「おにいさま、私もおじい様のおうちに行きたい」


「馬車に何日も揺られていくんだよ?野宿もするし。汚れるし、おいしいご飯はあんまりたべられないし。それでも行く?」


「えっと」


「次回からは転移魔法であっという間だから。少し待ってね」


「うーん、わかった」


 転移魔法は自分の知っている場所にしか

 転移できない。

 幼いときに僕は実家に帰省しているのだけど、

 場所をはっきり把握していないのだ。



 母方のお祖父様とお祖母様はまだ健在だ。

 伯爵家で姓をガルディーニといった。

 数年前まで事業でぶいぶい言わしており、

 羽振りが良かったそうだ。


 しかし、事業の失敗で没落。

 領地があるのでなんとかもたせているが、

 借金がなかなか返せないという。



 お祖父様は、

 首都キーオンから南西へ300kmほど行った所、

 港町キンザを領都とする領主だ。


 キンザ自体は人口5万人の街で、

 この時代としては割合大きい。

 領地人口も約20万人いるという。


「ご無沙汰しておりました、お祖父様、お祖母様」


「久しぶりじゃな、ロレンツォ」


「元気でしたか、ロレンツォ」


「私もご無沙汰しておりました」


「おお、ランベルト、久しぶりじゃの」


 ランベルトはB級冒険者のときに大きなミスをして、それをお祖父様に被ってもらい、そのままランベルトをお祖父様が雇用し母上のお付きにした、という流れがある。


 僕はしばらく差し障りのない話を重ねて、


「実は、少し前におかしな病にかかりました」


「病とは?」


「高熱が出たまま寝たきりになるのです」


「ふーむ。眠り毒の症状と似ておるの」


「医者の見立てでも眠り毒ではないかと」


「子供に対する毒としては有名じゃからの。ここだけの話じゃが、以前より我が一族に対する攻撃が目立っておった。残念じゃが、お前の母のことやワシの事業のこととかもその一環じゃと思うとる。お前の母は毒殺された疑惑がある。ワシらが販売する食品にも毒が混入されて大騒ぎになったのが、事業が失敗するきっかけじゃった。そして、おまえの眠り毒。毒つながりじゃ」


「お祖父様、私はしばらく潜伏するつもりです。私は魔法を使うことができますが、このまま魔法の才能がないように見せかけるつもりです」


「ほう、すると宮廷追放を狙っとるわけじゃな」


 お祖父様は話が早い。


「おそらく、北のどこかへ追い出されることになります」


「うむ、いい案かもしれんの。それに現政権に対する人心はかなり悪そうだしの。貴族に対しても酷いことをやっておって、戦争とかおきたら従軍する貴族はどれだけいるのか」



 僕は市場での庶民のうわさ話を披露しつつ、

 北の領地での事業プランをお祖父様に話した。


「それはまた気の長い話じゃな。ではそれに向けて準備中ということか」


 お祖父様には僕の活動内容をありのままに話した。

 魔法の実力も見てもらった。


「おお!ロレンツォ、おまえは幼い頃から優秀すぎる子供だったが、今の王国でおまえより魔法力のあるものはおらんのじゃないか」


「お祖父様、生意気申し上げるようですが、魔法はみんなの生活を楽にするものだと思っています。魔法をどう生活の中で活かすのかが僕の現在のテーマです」



 今の時点では、

 食生活を豊かにすることに魔法を全振りしている。

 その成果として、

 お祖父様に焼き肉レストランを提案してみた。

 僕はお祖父様にお土産を渡した。


「この肉をロレンツォが熟成させたのか。見事なもんじゃの」


「城の図書室で本ばかり読んでおりますが、時々実務的なものにでくわすことがあります。僕はそのとおりに肉熟成用の地下室と魔道具を作りました」


「安定して供給できるのか?」


「僕は、マジックバッグを開発しました」


「なんと、マジックバッグをか。商人ならずとも喉から手が出るほど欲しがるぞ」


 マジックバッグは古代遺跡から稀に見つかる。

 希少価値が高く、億の値段がつく。

 僕はお祖父様とお祖母様に

 鹿皮製のマジックバッグをプレゼントした。


「まあ、こんな高価なものを。ありがとうね、ロレンツォ」



「それと、転移魔法も合わせて取得しました」


「転移魔法じゃと?伝説でしか聞いたことのない魔法じゃの」


「マジックバッグもですが、城の倉庫から古代魔法書を発見しました。なんとか解読に成功しております」


「古代魔法書を解読しただと。ああ、なるほど。ロレンツォ、おまえが狙われるわけだ。おまえは幼い頃から神童の誉高かったが、ちょっとスケールが違うの」


「今は本当に大人しくしています。現状ではおおっぴらにはできませんが、今後のことを考えて、少しずつ実績を積み重ねていこうかと」


「それなら、王国の南へ千キロほどいったところにある島はどうじゃ。ティオルマー島のパパ平原というところで野生の牛が繁殖しておる。見渡す限りいるというぞ。マジックバッグ・転移魔法・熟成室とお膳立てはあるわけじゃ。現地視察してみるか」


「そんな美味しそうな話、各国が注目しているのではありませんか」


「それがの。牛が獰猛で数が多すぎるからどこも手がだせんという話じゃ。軍隊が全滅した、という話も一つや二つではない。現地に詳しいヤツをつれていくから、大丈夫だと思うが」


「お祖父様、僕が結界・防御魔法を張っていきますから、大丈夫だと思います」


 僕は、結界・防御魔法をその辺の木にかけて

 上級魔法をぶつけてみた。


「ほお、あの威力の上級魔法を食らっても傷一つつかんの。こりゃ大丈夫そうじゃな」



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