3 ロレンツォ10歳~

第15話 10歳、色々難しい魔法を覚えた1

■ロレンツォ10歳


「え?なにこれ?」


 ふいに僕の視界の片隅に魔法の発動式が。


「いや、この式は脳内で視覚化されているようだ。でも、なんの式?」


 僕は式の検討を始めた。

 検討というか、魔法式の最初に

 なんの式か書き込まれているのが普通だ。


「結界魔法?まさか、城の結界魔法?」


 驚くことに、城の結界魔法式を

 僕は読み取れるようになっていた。

 


「大変なことだぞ、これ。えっと、他に簡単に魔法式を見られるのは……よし、宮廷魔道士の練習場だ」


 練習場は城の裏庭に広大なスペースがある。

 見学はご法度だが、僕は王族だからフリーパスだ。


 行ってみると、丁度魔道士師団の練習中だった。


「おお、見える、見える!」


 彼らの発動式が視界に浮かび上がってきたのだ。

 発動式が僕の視界を遮るかというとそうでもない。

 視覚化されたと感じているだけで、

 実際は脳内に式が浮かび上がっている。



「?」


 ひょっとしたら


「僕はこの式をいじることができる?」


 試しに式をほんの少しだけいじってみた。

 魔導士が魔法を発動しようとするときに、

 僕は魔法式を一瞬で書き換えてのだ。


「あれ?」


 どうやら、思ったような魔法が発動しないようだ。


「うわっ、本当に式を書き換えできた」



 で、城の結界魔法。


「じゃあ、城の結界魔法も検討してみようか」


 流石に城の結界魔法は長大だ。

 でも、かなり雑で魔法式の組み立てが甘い。


 しかも不完全で、城のあちこちに綻びがある。

 結界の切れている場所が多いのだ。

 だから、僕たちは外に簡単に出入りできたんだ。



「これ、もっとコンパクトにできるよな……やってみよっか」


 展開している魔法式自体は書き換え可能だ。

 でも、結界魔法を放つ魔道具を書き換えるのは

 ムリだった。

 

 でも、任意の場所の結界を書き換えて

 より自由に出入りできるようになった。


 結界魔法が一番強力にかかっているのは、

 城の機密部屋だ。

 機密情報がたくさん置いてある。


「よし、マル秘重要機密、手に入れ放題!」


 その部屋で、最重要魔法の詠唱式と

 古代魔法の詠唱式を手に入れた。



「え?古代魔法って、日本語?翻訳したとかじゃなくて?」


 驚いたのは、古代魔法はこの世界の言葉ではない。

 なんと、それは明らかに日本語だった。

 ひらがな・カタカナ・漢字・ローマ字、

 それから絵文字もある。


「古代人ってどういう人達だったんだろうね」


「伝承によると、もの凄く発達した世の中だったらしいですよ。鉄の鳥が飛ぶとか、小さな箱の中で運動会をやってるとか。魔法が発達しすぎて滅亡したって話ですけど。まあ、おとぎ話ですよね」


 フィナはそういうんだけど。

 僕にはわかる。

 それはおとぎ話じゃない。

 まさしく、現代日本・地球の話だ。


 宮廷魔導士が話していたことがある。

 彼の生涯の夢は古代語の解明だと。


 彼が言うには、古代語は悪魔のように複雑で、

 少なくとも4つのスタイルの文字から成り立つ。

 3種類の簡単なスタイルの文字はなんとかなる。

 やたら複雑な文字が相当やっかいらしい。


 4つの文字って、

 ひらがな、カタカナ、アルファベット、漢字?


 なるほど。

 彼の言う内容は日本語にあてはまるぞ。


 古代魔法は伝説では凄いものばかりだ。

 まさしくファンタジーの如し。

 実際、やばいんじゃないか、という魔法もある。

 ブラックホール魔法とか。

 

 僕は、古代魔法をどんどん理解していった。

 文章自体はかなり難解であるものの、

 言葉が理解できないわけじゃない。

 日本語だからね。

 ただし、発動できるのは少しだけど。

 現在の僕では魔力が不足しているようだ。


 でも、古代人は日本人じゃないよな。

 偶然だよね。

 日本人の転生者がいたっていう線はあるかも。



 有益な魔法もいくつか発動できるようになった。

 その一つが空間魔法である転移魔法だ。


 遠くの場所へ一瞬にして転移できる魔法である。

 転移魔法陣が必要になるけど。

 この世界で転移魔法が使えるのは僕だけだと思う。

 古代魔法って誰も知らないから。


 僕と一緒なら、数人の人間も同時に転移できる。

 ランベルトとフィナとで転移したら、

 非常に喜ばれた。


「お坊ちゃま、マジ天才。でも気をつけてくださいね」


「まったくですな。転移魔法ができるなんてしれたら、世の中大騒ぎになります」


 くれぐれも他人にばれないよう、

 転移魔法陣は森の奥と僕の部屋に置いてある。


 森の奥は僕の魔法の練習場である。

 普段、それらの魔法陣は見えないようにしてある。

 見つかる心配はないと思う。



―――――――――――――――――――――――

ブックマーク、ポイント大変ありがとうございます。


励みになりますm(_ _)m


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る