第14話 孤児院への援助
「誠にありがとうございます。おかげさまで子どもたちの栄養状態も上向いてきました」
「シスター、どうぞお顔をお上げください。全ては神の御心です」
僕は街の惨状を見るにつけ、何かできないかと
とりあえず孤児院への寄付を始めた。
「差し出がましいんですけど、少し提案がありまして。聞いて頂けますか?」
「はい、なんなりと」
「僕たちの寄付は微々たるものです。しょせんは個人レベルですから。それに、寄付に頼る生活は
「よくわかります」
「それでですね、この孤児院の子どもたちにもっと力を与えられないかと」
「力をですか?」
「はい。一言でいえば、子どもたちに教育を。文字を教え、計算を教え、森へ行く技術を教える」
「ああ、それは助かります。私どもでも文字や計算は教えるのですが、森へ行く技術は難しいです」
「こちらのものは元有能な冒険者でした。それに私どもは日々魔術を指導をしております。それを子どもたちにも授けようかと」
「本当にありがとうございます」
ここでまたもや、シスターの祈りが入る。
◇
魔力の指導、これで才能を示したのが
ローリアだ。
セリアから魔力を引き出す手助けをするうちに、
コツを掴んだらしい。
彼女は週1の感覚で孤児院で指導を始めたのだが、
魔力の授業で次々と魔力を発現させていった。
「凄いじゃないか、ローリア」
「いえ、子どもたちに才能があっただけかと」
「いやいや、謙遜しなくてもいいよ。君には人を導く才能があるんだね」
「本当に素晴らしいです。わたしたちの子どもたちにこれほどの才能が眠っていたとは」
この世界では魔力を示すものは貴族等、
富裕層に偏重していた。
それは庶民に才能がないからというわけではない。
単純に教育の差が大きいのである。
だから、適切な指導が加われば、
貴族・庶民関係なく魔力が発現するのだ。
「アルベルトのほうはどう?」
「まずはですね、逃げる技術から、と思ったのですが、男の子を中心に不評でして」
「まあ、そうだろうなあ。チャンバラしたいもんね」
「ええ。ですので、半分は素振りですね。これも不評なんですがね」
「基礎は面白くないもの」
「で、今はかくれんぼとか追いかけっことかを練習に取り入れています」
「ほう」
「これがなかなかいいんですよ。特にかくれんぼ。魔力が発現したこともあるのですが、気配を消すことのできる子とか鬼の位置を察知する子とかがでてきまして」
「単なる遊びでそんな貴重なスキルが発現するんだ」
「ええ。斥候は森では非常に重要ですからね。しばらくしたら、森に連れて行こうかと」
「なるほど。そりゃ、いいや。子どもたちも森で何が大切が学べるしね」
森での活動は薬草採取がメインになる。
そうなると、危険をどれだけ早く察知し、
そこから離れるか、が重要な技術となる。
それは魔物を狩るうえでも重要な技術だ。
相手に察知されずに敵に近づき、
有利なポジションをとって、
極力遠距離から敵を攻撃する。
子どもたちの魔力の発現は比較的すぐに実現した。
スキルもいくつかモノにするようになった。
しかし、魔法は流石になかなか発現しなかった。
ちなみに、スキルは魔力を消費しない。
魔法は魔力を消費して力を行使する。
それでも、孤児院では年長組である
10歳以上の子には魔法が発現し始めていた。
「おお、火魔法ファイア、俺、使えるようになったぞ!」
「私は水魔法ウォーターよ!これで髪をいつでも洗えるわ!」
当初は初歩の初歩魔法だけだった。
しかし、指導を重ねるうちに、
実践的な魔法を身につけ始めた。
「へへ、今日はファイアボールで獲物を狩ったぜ」
「俺は風刃で獲物の首を切り裂いたぞ」
「私の水魔法防御も忘れないで。私のお陰で獣の突入を防いだんだから」
子どもたちは薬草採取のレベルを越え始めた。
中には冒険者ギルドに登録する子も出ている。
冒険者ギルドとは、冒険者稼業の斡旋をする団体。
どの街にも一つはある。
大きめの村にもある。
冒険者カードの発行、依頼の取次、
モンスターの死骸の買い取り、飲食の提供などを
している。
冒険者とは、冒険者ギルドで依頼をうけ、
ハンター、傭兵業、護衛などをするものを言う。
「俺は冒険者として有名になるぞ!」
正直、冒険者は褒められた職業とはいえない。
冒険者にでもなろうか、とか、
冒険者にしかなれない、といった
デモシカ職業と言われる後ろ向きな職業ではある。
実際、ほとんどはその日暮らしだ。
しかし、実力を示すことのできるものは、
王国でも著名な財産家となりうる。
実際、王国の高収入者ランクがあれば、
庶民レベルでは多くの冒険者が上位に進出する。
そういう人物は王国でもアイドル的な人気になる。
冒険者は身一つで立身出世できる花形職業なのだ。
それにしても、一連の僕の行動。
教会のシスター相手への言動なんて
堂々たるものだ。
僕は9歳の子供なんだぞ?
日本時代ならようやくオネショしなくなって
ほっとしているような年頃なんだぞ?
しかも、それを誰も変だとは思わない。
確かに、僕の中身は30歳近い日本人だ。
でもね、僕はヒッキーでもあったんだ。
社会性は0に近い。
企業の面接でもキョドりまくるぐらいなんだ。
これはロレンツォの力としかいいようがない。
持って生まれたものが違いすぎるのだ。
王族としての威厳というものであろうか。
いや、王とか次男とか威厳がおかしな方面に
発揮されている変な人たちも多い。
となると、個人の資質というべきか。
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